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インタビュー

アジャイルへの移行の結果を可視化へ。データ・ドリブン経営を目指す弥生株式会社の取り組みとは?

アジャイルへの移行の結果を可視化へ。データ・ドリブン経営を目指す弥生株式会社の取り組みとは?

バックオフィス業務の自動化を支援するソフトウェア「弥生シリーズ」を展開する弥生株式会社では、エンジニア組織における個人の振り返りや組織の課題発見に、エンジニア組織支援クラウド「Findy Team+」を活用頂いています。

今回は、弥生でCTOを務める佐々木さん、スクラムマスターの髙瀬さん、CCoEとしても活動するエンジニアの水尻さんにインタビュー。新サービス開発のために行われた組織改革や、開発生産性の計測への取り組みを始めた背景、「Findy Team+」の活用を含む今後のトライなどについてお話を伺いました。

目次

新サービスの開発を進めるため、組織改革を実施

――まず最初に、皆さんのこれまでのご経歴や現在のロールについて教えてください。

佐々木:AI系ベンチャーにてPaaS/SaaSの企画・開発・運用やR&D、組織運営をしていました。その後、PaaS/SaaSでAWSを利用したことを切っ掛けに外資系クラウドベンダーに参画し、Cloud Infrastructure Architectとしてコンサルティング業務に従事していました。その後縁あって弥生株式会社に入社し、2022年1月よりCTOとしてエンジニア採用/教育、全社的なアーキテクチャ検討やR&D支援などに従事しています。

髙瀬:前職はSIerで、受託のウォーターフォール開発をしていました。その会社には13年ほどいて、プレイングマネージャーを務めていました。弥生にジョインしたのは1年ほど前で、当初はプロジェクトマネージャーという立ち位置でした。途中からスクラム開発に移行し、現在はスクラムマスターをしています。

水尻:僕は前の会社が2020年に弥生と吸収合併し、弥生に転籍してきました。主な業務は、請求管理サービス「Misoca」の開発で、前の会社から合わせて5年ほど開発に携わっています。それと並行して、佐々木さんと一緒にCCoEとしてクラウド利用を推進する活動もしていて、その活動の一環として「Findy Team+」の導入を進めました。

――弥生の開発組織では組織変革が行われたそうですが、その背景や経緯について教えていただけますか?

佐々木:まず関連するプロダクトの歴史からお話ししますと、もともと弥生は会計領域のソフトを中心に、スモールビジネスのお客様のバックオフィス業務を便利にするソリューションを提供してきています。

大きく分けると業務支援サービスと事業支援サービスの2つの柱があり、業務支援サービスとしてバックオフィス業務に関連する会計や給与計算のソフト、事業支援サービスとして起業・開業を支援するサービスや、事業承継を支援するサービスなどを展開しています。このうち、主に業務支援サービスの方を内製で開発しています。

業務支援サービスには、昔からあるデスクトップソフトの製品と、クラウドサービスがあります。既存の製品は、機能アップデートや法令改正を中心に開発をするため、年1回の法令改正を中心に開発をします。そのため、ウォーターフォールで進めやすいです。一方で、新しいサービスもつくっていかなければなりません。新サービスがなかなか世に出せないことは、弥生の経営課題の1つになっていました。

お客様はそもそも会計がしたいのではなく、ビジネスがしたいわけなので、会計は意識せずとも終わっている方がいいですよね。それを今までのサービスで実現できるかというと、少しアプローチを変えなければいけない。では、具体的に何をつくればいいのかというのは、お客様の反応を見ながら開発していく必要があります。

今までのような年に1回の大きなリリース、四半期に1回のホットフィックスではなく、日常的なリリースをしていくためには、やはりアジャイルやスクラムが適しています。新サービス開発に着手したのは2019~2020年ごろで、最初は開発本部内のいち組織として始めたのですが、よりスピードを上げるアプローチの1つとして組織改革も行ってきました。

もともとは開発本部が他の部から依頼を受けて開発する、いわゆる社内受託のような体制でした。ですが、新サービスの開発をその体制でやっていると、すごく時間がかかってしまいます。なので、既存サービスを開発する開発本部とは別に、ビジネス側も同じ組織に入って一緒にものづくりしていく新部署をつくりました。それが、「弥生Next」という新サービスを開発する次世代本部です。

これによって現在は、機能ごとに切り分けた開発本部やマーケティング本部と、ビジネスと開発が一緒になった次世代本部、それぞれが混在する組織になっています。

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――社内受託のような体制になっていたことは、以前から課題として認識されていたのでしょうか?

佐々木:そうですね。実際に外部からの受託ほど縦割りだったわけではないのですが、部署をまたぐため形式に従って要件定義書を書き、開発側でもそれをきっちりチェックするような重いプロセスになっていたんです。そうしていくうちに、気軽に進めづらい雰囲気になってしまったのかなと。私がジョインする前のことなのですが、話を聞く限りではそのように感じます。

――開発組織では、「1クリックであらゆるバックオフィス業務を完了させ、お客さまの1日の労働時間の100%を本業に費やすことができる状態にする」というミッションを掲げられているとうかがいました。

佐々木:はい、開発本部ではそうしたミッションを掲げています。ただ、昨年10月の開発本部と次世代本部に分かれたタイミングで、本部ごとにミッションを作成しており、次世代本部の方がより自動化を意識したミッションになっています。

髙瀬:次世代本部は「弥生Next」という新ブランドの製品をつくるチームなので、その世界観として「日本全国のスモールビジネスと​そのステークホルダーが​最も頼る経営プラットフォーム」を目指しています。そのなかにバックオフィスの自動化やフロント業務のデータ利活用、経営状況の可視化などが入ってくるイメージです。

――本部ごとにミッションをつくられたとのことですが、各部に共通する行動指針などはありますか?

佐々木:共通しているのは、カスタマーオブセッションですね。先ほどお話した社内受託のような形でやっていると、社内で要求を出してくる人のほうを見ながら仕事をしてしまいがちです。しかし、その裏にいるお客様のことをしっかりと見なければなりません。

特に意思決定においては、先代の社長がお客様やその領域にくわしく、それに頼ってしまう雰囲気がありました。そうではなく、ちゃんと自分自身でお客様のことを見て、お客様のことを考えて行動する。そういった考え方が重視されています。

全社的なデータドリブン経営への移行が計測のきっかけに

――どのような背景から、開発生産性の計測への取り組みを始められたのでしょうか?

佐々木:しっかりとデータを取ってそれをもとに判断していく、データドリブン経営が必要だという話が、全社的に上がっていたことが背景にあります。というのも、歴史の長い会社ではよくあることかもしれませんが、勘で判断されることが多くあったんですね。

開発においても、これまで開発をより効率化するためにさまざまな施策を打ってきていましたが、それがどう効いたのか、どの施策が良かったのかなどを、定量的に見られておらず、勘に頼っているところが多く見受けられました。なので、しっかりと定量的なデータを取り、判断していこうという話になったんです。

また、ウォーターフォールで取っていた指標はあったものの、アジャイルに移行していくにあたって、どのような指標を取ればいいのかという疑問も出てきました。そこで、CCoEのミーティングで水尻さんに相談してみたところ、Four Keysという指標があり、それを計測できるツールがあることを教えてもらいました。

――水尻さんがFour Keysに注目された背景や、「Findy Team+」を知ったきっかけを教えてください。

水尻:Four Keysについては、多くの人がそうだと思うのですが、『LeanとDevOpsの科学』という本を読んで知ったのが最初です。そして、Four Keysを計測するにあたって自分で実装するか、「Findy Team+」のようなSaaSを使うか、この2つから考え始めました。

まずは一度自分で実装してみて、メトリクスが取れるところまでは実装できたのですが、これを自分以外のチームに展開するのは大変だなと思い、SaaSを検討し始めました。なかでも「Findy Team+」を選んだ理由は、もともと存在を知っていて、かつ「RubyKaigi 2023」のスポンサーブースで実際に動いている画面を見たことがあったから。そのおかげで、具体的に社内で使うイメージが湧いていたことが大きいです。

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――開発生産性の計測を通じたゴールはどのように設定されていますか?

佐々木:まず、「Findy Team+」で計測した数値を横並びにして、チームの良し悪しを比較することには使ってほしくないという思いがありました。というのも、各チームでやっていることもつくっている製品も違うので、一概に数値を高めることだけが正解とは思えないからです。なので、私から経営陣やマネージャーには、生産性の計測はするけれど、それを横並びにして評価しないでほしいと伝えています。

計測した数値は、自分自身のチームの振り返りに活かし、チームをより良くしていく改善サイクルをまわす目的で使ってもらいたいと思っています。改善サイクルがうまくまわれば、チームが強くなり、アウトプットされるプロダクトも良くなるはず。その結果としてお客様が増えて、弥生の売り上げが上がるとともに、弥生が提供しているサービスによって日本の生産性が上がるはずだと考えています。

水尻:僕はCCoEと「Misoca」の開発エンジニア、2つの立場でのゴールがあると思っています。まずCCoEの立場から言えば、「Findy Team+」というツールをさまざまなチームで使ってもらい、各チームでの開発生産性の可視化と向上のための改善を、もっと当たり前にできるように推進していきたいと考えています。

「Misoca」の開発メンバーの1人としては、こうした開発生産性への取り組みを通じて、開発チームのアウトプットを増やし、最終的には自身がつくっているプロダクトの価値を高め、アウトカムをより大きくしていくことがゴールだと思っています。

髙瀬:スクラムチームを見ている立場として、開発生産性というのは、どこまでいっても1つの視点でしかないと思っています。我々は開発生産性の計測を通じて、まだ試行錯誤をしている旅の途中なので、なかなか明示的なゴールを設定することは難しいなと。

ただ、開発生産性に限らず、プロダクトチームはプロダクトをリリースし、お客様からフィードバックをいただきながら、常に価値のあるプロダクトをつくることを考えるべきで、そこに向かっていることが大事だと思います。

ウォーターフォールを長く経験してきた僕からすると、デプロイ頻度のような指標は「そんな視点があるんだな」と感じる新鮮なものでした。開発生産性はエンジニアのためだけのものではなく、プロダクトチーム全体として考えていくべき議題の1つというイメージです。

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――指標をOKRやKPIに紐づけることは、今のところは想定されていないでしょうか。

佐々木:はい、Four Keysを直接紐づけることはしないと思います。ミッションを達成するために見ておいた方が良い指標というイメージですね。

活用のさらなる試行錯誤や、社内での導入チーム拡大へ

――「Findy Team+」の導入にあたって、社内やチームの理解を得るのに苦労したことはありましたか?

佐々木:社内では壁がなく、使ってみたいツールがあれば、「やってみて」と言われる環境があります。ただ、そのツールを入れた結果がどうなったかを聞くと、「そういえば最近あれ使ってないね」ということが多かったんですね。

それはつまりツールを入れた結果、数値が上がったのか下がったのかを見ていないということ。そういった結果をしっかり確認するためにも、可視化が必要だよねといった話をしていたら、特にどこからも反対の声はありませんでした。

髙瀬:導入してみて、チームが必要に駆られないところが最大の難所だと感じました。数値を出していても、それよりも自分にとってインパクトが大きい内容を振り返ることが多くなるんですね。振り返りのときに、事実ベースで話をしていこうとか、そういった地道なアプローチをしていくところは、今でも少し苦労しています。

水尻:「Findy Team+」の導入を提案した側としては、運が良かった部分もあったと思います。先ほど話題に上がった、全社的にデータを重視していく方針があったことが、まず追い風の1つになりました。さらに、佐々木さんが和田卓人さんの「質とスピード」の発表を聞いて、Four Keysの重要性について共感を得られていたこと。この2つの追い風があったから、スムーズに進んでいったのかなと感じます。

あとは、「Findy Team+」のトライアルのときに、髙瀬さんのチームにお願いしたのですが、データを見てチームの課題を見つけるなど、自分が思っていた以上にこのツールを活用してもらえていました。それを見て、「Findy Team+」を活用していく実感を得られたことも大きかったです。

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――開発生産性の計測に関して、今後のトライとして考えていることはありますか?

佐々木:私の方では、今後1つ予定している取り組みがあります。御社のイベントでヤフーさんが、生産性が高い開発チームの習慣をアンケートで把握していたという発表をされていました。その後、懇親会でヤフーさんに直接お話をうかがいまして、その取り組みを参考に弊社でもやってみようと考えています。

髙瀬:ツールで計測するだけにとどまらず、スクラムのなかの活動について、どういう考え方やアプローチができるのかを、今後もチームと試行錯誤していきたいです。スクラムマスターとして、例えば「今回はこういうデータだったね」と事実ベースでチームに伝達するようなアプローチを少しずつ行い、それに対してチームがどう考えるのか、というステップを経ようと思っています。スクラムマスターから言われたから、とかそういうことではなく、チームメンバーが自分たちで発想したり、思考するというところにトライしていきたいと考えています。

水尻:僕としては、「Findy Team+」を社内のいろいろなチームで使っていくことを、今後のトライと考えています。なので、社内で使っていくにあたって、どんな良いところや課題があったかを調査し、他のチームで使ってもらうためのアプローチを探りながら、広げていきたいと思っています。そして最終的には、開発組織の各チームでの生産性を、しっかりとデータで見られる状態に持っていきたいです。

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――それでは最後に、御社の組織のアピールポイントや、一緒に働きたいエンジニア像を教えてください。

スモールビジネスと呼ばれる中小企業・個人事業主は、日本全体の企業数の99%を占めています。 ベンチャー企業はもちろん、行きつけのカフェや美容室など、私たちの生活はスモールビジネスによって支えられています。 私たち弥生は、夢を実現しようとするスモールビジネスを応援すると同時に、彼らの事業に寄り添い、支える存在でありたいと考えています。

実際に、弥生ではお客様の業務を効率的に変えていくサービスの開発に関わることが出来ます。企画から開発、運用までを自社で行っているため、超上流工程から経験を積むことも可能です。色々と新しい事にチャレンジしているため様々な課題も見つかっていますが、日々楽しみながら組織や製品の課題を解決するために試行錯誤してくださるような方にJoinして頂けると嬉しいです。

――皆さん、本日はありがとうございました!

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※弥生では、エンジニアを募集しています。

エンジニア採用サイト | 弥生

※「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。

https://findy-team.io/service_introduction

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