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イベントレポート

チームの壁をぶち破る! 開発生産性と組織のダイナミズム向上

チームの壁をぶち破る! 開発生産性と組織のダイナミズム向上

2024年11月15日、ファインディ株式会社が主催するイベント「開発生産性Kaigi スタートアップが目指す、開発と事業成長の接続〜価値創造への挑戦〜」が開催されました。

本記事では、アソビュー株式会社でVP of Engineeringを務める服部 毅保さんによるセッション「チームの壁をぶち破る! 開発生産性と組織のダイナミズム向上」の内容をお届けします。

■登壇者プロフィール 服部 毅保(@tkyshat) アソビュー株式会社 VP of Engineering

新卒で富士通に入社し、海外スタートアップを経て2016年にアソビューに参画。バックエンドエンジニアやスクラムマスターとして遊びの予約サイト「アソビュー」に携わる。その後、ベトナムのオフショア開発組織を現地CTOとして立て直し、コロナ禍に帰国後、開発チームのエンジニアリングマネージャーを経て、2024年からVPoE就任。

目次

アソビューが展開するサービスとプロダクト組織

服部:「チームの壁をぶち破る! 開発生産性と組織のダイナミズム向上」というタイトルで発表させていただきます。まずは簡単に自己紹介です。アソビューでVPoEをしている服部と申します。2016年にアソビューにバックエンドエンジニアとして入社し、2018年にベトナム組織のCTOを担当。その後、エンジニアリングマネージャーを経て、今年からVPoEをしています。

続いて、会社紹介をさせてください。アソビューは「生きるに、遊びを。」をミッションとして、遊び市場に特化したプラットフォームを展開している会社です。従業員に大事にしてほしいバリューとして、FOR YOU、PROFESSIONAL、ONE TEAMを掲げていて、このバリューをもとに人事制度など各種制度が組まれています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-1

服部:サービスとしては、遊びの予約サイト「アソビュー!」を中心に、業務DXソリューション事業、ふるさと納税事業、ギフト事業など複数サービスを展開しています。

数字から見るサービス規模感としては、初めてサービスをローンチしたのは2012年で、今では20を超えるサービス数になりました。会員数は1,200万人、契約施設数は約1万以上、データベースのテーブル数は2,000を超え、ピークトラフィックは4,000rps。プロダクト部門の人数は今100名を超えていて、チーム数は17になっています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-2

服部:プロダクト組織と事業の関わり方は、各事業ごとに事業部のコアメンバーがいて、営業やマーケティングのような機能は、各事業に横断的に携わっています。プロダクト組織も同様に横断的に携わっていて、いわゆるマトリクス型の組織構造になっています。

プロダクト組織の全体像としては、大きく分けてプロダクトエンジニアリング領域、プラットフォームエンジニアリング領域、組織開発領域があります。

プロダクトエンジニアリング領域では、各事業ごとのチームでプロダクト開発を行っていて、プラットフォームエンジニアリング領域では、データ基盤チームやSREチームが横断的に関わってくれています。組織開発領域のメンバーは、プロダクト組織の全体的なマネジメントを実施しています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-3

生産性レベル別に行う開発生産性向上の取り組み

服部:今日は、チームを超えた活動の場を提供して、みんながリーダーシップを発揮できる機会を増やそう、という話をお伝えできたらと思っています。リーダーシップとはそもそも何かというと、アメリカの心理学者ストッグディル(R.Stogdill)は「組織化された集団の活動が、目標設定と目標達成に向かって努力するよう影響する過程」だと定義しています。

文言だけ見ると難しい感じがしますが、雑然としていた組織が目標に対して、前向きになるように影響する過程がリーダーシップだということですね。リーダーシップは一部の人が持つ特殊な能力だと思われがちで、「私は持っていない」と思う人もいるかもしれませんが、誰もが発揮できるものだと僕自身は思っています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-1

服部:今回は、開発生産性向上の取り組みのなかで、組織横断のリーダーシップが発揮された事例をお話ししたいと思っています。アソビューでは、開発生産性向上に取り組んでいます。背景としては、ユーザーへの価値提供スピードの最大化、組織拡大に備えた効率的な開発プロセスの確立、開発者体験向上を自ら行うことによる組織力や技術力の底上げといった狙いがあります。

広木 大地さんの記事にあった生産性レベル別の取り組みをしていて、実現付加価値生産性に関しては、PdM体制の強化を行ったり、期待付加価値生産性に関しては、工数モニタリングを行ったり、仕事量の生産性に関しては、「Findy Team+」を利用したFour Keysの向上を行ったりしています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-2

服部:PdM体制の強化については、各プロダクトにPdMを配置したり、CPOの役割変更をしたり、あとはプロダクト戦略を明確化して、プロダクトの成長に寄与できるような体制に変えていっています。

工数モニタリングについては、変更のリードタイム以外にも、時間を割いている業務が皆さんあるのではないかと思います。例えば、採用活動や技術広報といったものがあります。そういった活動を可視化して、改善を目的とした工数モニタリングを行っています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-3

服部:Four Keysの向上については、「Findy Team+」を利用して改善活動を実施しています。今年の7月から導入していて、1年前と比べてデプロイ頻度が8.5件増加したり、変更のリードタイムが約800時間短縮されたりと、改善が進んでいます。今回は、「Findy Team+」の全17チーム同時導入と、その改善活動のプロセスについてお話ししていきます。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-4

目的や責任を明確にする“役割の見える化”の取り組み

服部:「Findy Team+」を導入するとき、マネージャーやリーダーが導入に携わるのは負荷が高くて難しいという課題がありました。とはいえ、すでに契約していてコストがかかっている状態なので、できるだけ早く全チーム同時に導入を進めたい。そのため、新たな役割をつくり、そこにメンバーを任用をしていくプロセスを踏むことにしました。

アソビューでは、役割の見える化に取り組んでいます。目的としては、組織規模拡大に対応すること、組織構造に柔軟性を持たせること、一人ひとりの活躍や成長機会を最大化すること、変化に素早く適応できる組織をつくることが挙げられます。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-3-1

服部:例えば、マネージャーという役割はどの会社にもあると思いますが、アソビューにおけるマネージャーと他の会社におけるマネージャーでは、おそらく役割のなかで持っている目的や責任が違うんですよね。

名称が一般的なものほど、個々の認識が異なって、ひとり歩きしやすくなると思っています。本来重要なのはマネージャーという名称よりも、その名称が持っている目的や責任で、これらを明確にすることが重要です。

そのため、アソビューでは役割に対して、目的、責任、領域などを定義しています。例えば、弊社のマネージャーであれば、メンバーと1on1をしたり、全社施策を浸透させたり、部門イベントの設計をしたりといった役割があります。こういったものを可視化することで、役割に対する認識の曖昧性を排除しています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-3-2

服部:弊社では、Holaspiritというツールを用いて役割の見える化に取り組んでいます。スライドの左側が、技術広報の役割を可視化したもの。右側が、SREの目的や領域、説明責任を定義したものです。

役割の見える化と任用によって、組織にはプラスに働くものの、メンバーにとっては負担が増えるのではないかと感じられる方もいるかもしれません。しかし、役割の見える化と任用は、メンバーの成長につながると我々は思っています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-3-3

服部:デービッド・コルブの経験学習モデルでは、人は経験して観察し、それを概念化して実験するという、このサイクルを繰り返すことで成長していくとされています。役割を見える化して任用し、新しい経験をしてもらうことは、そのメンバーの成長につながるので、良い施策だと僕は思っています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-3-4

“委員会”の活動から、組織を超えたリーダーシップを発揮

服部:話は戻りますが、「Findy Team+」を導入するときに、開発生産性委員という役割を追加しました。開発生産性向上の取り組みを、チーム内で推進することに責任を持つ役割です。

この委員は全チームから1人ずつ、マネージャーやリーダーなどの呼称を持たないメンバーに任命し、かつそのメンバーはチームみんなで決めるというプロセスを踏みました。役割を見える化して、任用のプロセスを経ることで、取り組みの運用自体に責任感を持って実行してもらう狙いがあります。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-4-1

服部:彼らの各チームでの活動としては、プルリクレビューの遅延確認や、ミーティング分析による会議体の適正化などをしてもらっていました。「Findy Team+」は多様なデータの可視化がされているので、変更のリードタイムにおける施策を立案しやすく、チームの改善がすごくやりやすいツールだと我々は感じています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-4-2

服部:チーム横断の委員会での活動としては、全17チームから委員が集まって、各チームでの取り組みを共有したり、困りごとや悩みごとを共有したり、チーム横断で取り組まないと進めない課題の共有や相談をしたりしています。なかでも、チーム横断で取り組まないと進めない課題の共有や相談が、すごく重要だと思っています。

初期の委員会では、変更のリードタイムに直接影響しそうな施策の共有が多い状態で、これに関しては各チームの委員がリーダーシップを持って、施策を推進してくれていました。ですが、変更のリードタイムの向上がどんどん進んでいくと、直接影響しそうな施策は立案しづらくなってきます。

間接的に響くであろう前後のプロセスの悩みや、自チームだけでは解決が難しそうだったり、本質的な課題に気づけなさそうだったりする相談が増えてきた印象がありました。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-4-3

服部:ここでの相談の1つが、組織を超えたリーダーシップが発揮されるきっかけになりました。委員会で上がってきた相談に、「アクティブなスプリントで実施しているタスクにおいて、プロダクトオーナーにSlack、ときにはミーティングで詳細を確認することがある。デイリースクラムに、プロダクトオーナーやデザイナーがいると進めやすい」というものがあったんですね。

これに対して、「もしかしたらバックログリファインメントなど、開発プロセスに改善点があるかも」と気づいたメンバーがいました。そのメンバーは認定スクラムマスターで、もともと社内でスクラム開発に関する勉強会を開いてくれていたのですが、この相談を受けて、座学だけでなくワークショップでスクラムチームをつくり、実際にスプリントを回して体感してもらいたいと提案してくれました。

その後、実際にチームビルディングを行い、スクラムトランプというスクラムを疑似的に体験できるゲームを実施。これらはすべて自主的に、かつ他チームの人を巻き込んで実施してくれていました。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-4-4

服部:その他にも、一部チームのレトロスペクティブの資料を見て、改善できそうなところをコメントするなど、越境して他チームが良くなるための働きかけをたくさん実施してくれています。チームを超えた活動の場を活かして、リーダーシップが発揮された瞬間だなと僕は感じました。

アソビューでは、この開発生産性の取り組み以外でもみんなが活躍していて、全員の役割をHolaspiritによって見える化していることで、活躍自体が可視化されていると思っています。

役割には自分たちで決めたさまざまな名前がついていて、例えばSLOの番人、技術広報、IT統制指揮、重大インシデントコマンダー、Datadogコスト管理者など、それぞれにしっかり目的や責任があり、みんなが活躍してくれています。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-4-5

服部:最後にまとめです。リーダーシップは、誰でも発揮できるものだと思っています。そして、役割を可視化して、目的と一緒に定義して任せて、メンバーのみんなに活躍してもらうことが重要だと思っています。

横断的な役割をつくると、組織全体を活性化しやすい動きが生まれるので、とても良いなと思いました。なので、たくさんメンバーに任せて、個人と組織を強くしていきましょう。ご清聴いただき、ありがとうございました。 asoview_eventreport_2025/1/7_middle_h2-4-6

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