Findy Team+ Lab

NEW

イベントレポート

Go GEMBA! ユーザーファーストで事業に寄り添う開発組織戦略

Go GEMBA! ユーザーファーストで事業に寄り添う開発組織戦略

2024年11月15日、ファインディ株式会社が主催するイベント「開発生産性Kaigi スタートアップが目指す、開発と事業成長の接続〜価値創造への挑戦〜」が開催されました。

本記事では、ファストドクター株式会社でエンジニアリングマネージャーを務める小野寺 良祐さんによるセッション「Go GEMBA! ユーザーファーストで事業に寄り添う開発組織戦略」の内容をお届けします。

■登壇者プロフィール 小野寺 良祐(@engbld_onoder) ファストドクター株式会社 エンジニアリングマネージャー

10年間⼤⼿〜中堅Sler・ベンチャーでのエンジニアリング経験を経て独立。フリーランスエンジニアとして、AIロボティクス制御システム、OMOプロダクトのIoT連携システム、MaaS領域での動態管理システムなどを手掛け、ベンチャー・スタートアップ中⼼に、4年間で計6社の技術的⽀援。また1年間、企業や学校等で教壇に立ちIT⼈材の育成に注⼒。2020年ソフトバンクに入社。日本通運と物流DXを目指す共同会社設立に携わり、同社CTOとして4年間テック/プロダクト全般を牽引。出向解除のタイミングをもって退職。同社の技術顧問をしながら、医療スタートアップのファストドクターに入社。現在はエンジニアリングマネージャーとして勤務。

目次

夜間や休日の救急診療、新たな選択肢「ファストドクター」

小野寺:本日は「Go GEMBA! ユーザーファーストで事業に寄り添う開発組織戦略」と題しまして、イベントテーマである開発と事業の接続という観点を踏まえ、当社の取り組みを一部ご紹介させていただきます。

最初に自己紹介です。ファストドクター株式会社でエンジニアリングマネージャーをしております、小野寺と申します。SIerやフリーランスなどいろいろやってきましたが、当社に来る直前はソフトバンクにいて、日本通運とのジョイントベンチャーで4年ほどCTOをしていました。

大企業のリソースやシナジーを活かしながら、スタートアップ的に不確実なものづくりにスピード感を持って向き合うといった形で、巨大な二枚看板を背負って大変貴重な経験をさせていただきました。退任後、技術顧問をしながら、当社ファストドクターに参画して現在に至ります。

では最初に、当社の概要についてご紹介させていただきます。代表は水野と医師の菊地で、カテゴリーとしては医療スタートアップになります。当社の事業についてですが、例えば夜間や休日に急に体調が悪くなったとき、考えるのは近隣の救急病院にかかるか、あるいは救急車を呼ぶかということだと思います。そんなときに、もう1つの選択肢として「ファーストドクターを使おうか」と想起していただくことを目指しています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-1

小野寺:当社は全国の医療機関と連携して、夜間や休日など患者様が医療にアクセスしにくいシーンで、当社の医療プラットフォームに登録いただいている医師がご自宅へ往診に伺ったり、オンライン診療を受けたりできるサービスを提供しています。

会社全体では、このような事業を展開しております。救急往診・オンライン診療事業。BtoBtoCの事業として、クリニック様の夜間のオンコール体制を支援する在宅医療支援事業。また、急性症状だけでなく、メンタル不調の患者様向けのメンタルヘルス支援事業なども提供しています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-2

小野寺:自治体との取り組みも少しご紹介します。患者様から119番通報があった場合に、結果的に救急搬送が必要なほどではない軽症の患者様であることも多くあり、その分本当に救急車を必要とする重症患者を搬送できないことが大きな問題になっています。

そこで、通報があったときに当社のサービスが間に入って、医師によるトリアージを行い、「その症状であれば、救急車を呼ぶほどではないですね」とか、「朝まで待っていただいて、落ち着かなければ近隣のかかりつけ医を受診してください」といったアドバイスを行います。その結果、旭川の事例では、軽症の患者様の搬送の抑制に44%貢献した実績があります。

ファストドクターといえば、コロナで有名な会社だよねと言っていただくことも多くあります。実際、コロナ禍においては全国平均で救急搬送が増加しましたが、ファストドクターと連携いただいた自治体では、むしろ低下したという実績があります。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-3

小野寺:また、在宅医療では、夜間の対応をお任せいただくことで、クリニック様の夜間の負担を軽減。患者様から見て医療へのアクセスが24時間途切れないように、協力体制を築いています。現在は約400の医療機関と提携しており、全国に約95万人いる訪問患者のうち約10%は、ファストドクターにて夜間や休日の対応を行っています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-4

小野寺:サービスの紹介は以上になりますが、代表が起業家ランキングで1位を受賞するなど、当社の取り組みは各方面でご評価いただいております。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-1-5

答えは常に現場にある。強く根付く「Go, GENBA」の精神

小野寺:今回のイベントテーマである「開発と事業の接続」という観点で、当社ならではと思う取り組みをご紹介させていただきます。当社に強く文化として根付いている「Go, GENBA」という精神についてです。

これは往診の業務の流れを示したものです。例えば患者様から体調が悪いというお問い合わせをいただいたら、当社のメディカルコールスタッフが症状をヒアリングして、医師によるトリアージが行われ、往診に伺うのが適当だと判断されたら、中央管理室が往診に伺う医師やドライバーを差配します。

そして、実際に医師がご自宅に伺って診察を行い、必要があればその場でお薬を処方します。その後、医療事務スタッフがカルテをもとに算定をおこない、患者様や保健機関への請求をおこないます。また、特に経過観察が必要な患者様に対しては看護師チームがアフターフォローを行うこともあります。当社では、自社で医薬品の物流倉庫も持っており、このような一気通貫したサプライチェーンを持っていることが特徴です。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-1

小野寺:これが他社の医療ベンチャーと比較したときの当社の特徴であり、人や物がリアルに動く、「リアルオペレーション」が最大の強みです。ただ、リアルゆえに非効率な部分も潜在していて、そこをテクノロジーの力で寄り添って効率化、省力化していきたい。リアル×デジタルの相乗効果を発揮したいと考えています。

ですが、デジタル化を進めるなかで、思ったより作った機能が使われないとか、本質的にユーザーの価値を解決できていないとか、自己満足な機能を作ってしまうとか、そういったことが往々にしてあると思います。

例えば、医師が診察結果を入力するカルテをAIで自動化したり、項目を減らして簡略化したりすると、医師には喜ばれるかもしれません。でも、後工程に控える医療事務にとっては、必要な項目が入力されておらず、患者様や医師への確認が増えてしまった。このように、デジタル化が全体最適を歪めてしまうことがあります。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-2

小野寺:いたずらなデジタル化を抑制したいけれど、それがとても難しい。そんな開発組織あるあるだと思われる潜在的な課題に対して、課題解決に寄与していると私自身思うのが、当社に文化として根付く「Go, GENBA」という精神です。当社には5つの価値基準がありますが、今回はその1つである「Go, GENBA」をピックアップします。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-3

小野寺:当社には、実際の現場をいつでも体験できる制度があります。例えば、実際にメディカルコールスタッフとして患者様からの電話を取ったり、医師や看護師の往診に同行したりすることができます。

自分だけではなく、仲間たちが現場に行った体験も「こんな気づきがあって、こういうところを改善できるんじゃないか」といった内容とともに、社内のコミュニケーションツールで共有されます。

これは入社時の研修カリキュラムの1つとして定着していて、私も受けましたし、エンジニアを含む社員全員が「Go, GENBA」を肌で体感しています。希望者はいつでも研修を受けられるので、忘れないように定期的に受けている人もいます。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-4

小野寺:エンジニアから見た、「Go, GENBA」の意義をまとめてみました。まず、月並みですが、日々の開発業務に対する「主体性」や「自律性」は間違いなく育まれると思います。当社のサービスは、目の前に救いを求める患者様がいて、そこに手を差し伸べるようなサービスですので、実際に現場に行くことで、ダイレクトな手応えがすごく感じられます。

それから、「もっとこうしたい」という、開発現場からのボトムアップも活性化されていると感じます。机上で考えているよりも、やはり百聞は一見にしかずで、一次情報にアクセスする大切さを身にしみて感じられますし、ユーザーファーストで考える癖がつきます。

今回のイベントタイトルでもある「開発生産性」を向上することを考えるとき、チームのトポロジーを整えたり、コードレビューの効率性をはかったり、デリバリーの頻度を上げたり、そういったテクニック的なところに目がいきます。ですが、エンジニアの精神的な部分、目に見えないモチベーションも、間違いなく生産性に寄与していると感じています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-5

小野寺:また、当社にはドメインエキスパートが多く存在します。医師や看護師、薬剤師、医療事務といった、その分野のエキスパートの方が豊富にいて、それも一次情報といえば一次情報で、プロセス全般にドメインの知識をインストールしてくれます。

会議体を整えて、そういう方々とのコミュニケーションを設計をしており、これがプロダクトやチームの価値を底上げしてくれていると感じています。これによって担当領域に壁をつくらず、例えばセールスから開発に「これお願いね」と丸投げするような感じではなく、みんなが当事者意識を持ってグラデーションで関わり合う感じになっています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-6

小野寺:もう少しだけ開発の事業との接続という文脈でお話しすると、開発と事業が相互に染み出すことを大事にしています。開発から事業に染み出すことは、「Go, GENBA」やドメインエキスパートを活用して、当事者意識でしっかり考えられています。ボトムアップでの改善要求が積極的に行われ、トップとボトムのコミュニケーションが活性化されていると感じます。

それだけではなく、事業から開発に染み出す取り組みもしています。例えば、ローコードツールの積極的な活用です。これは事業側がいちいち開発に依頼しなくても、プロトタイプをサクッと作ってPoCを行えるというような染み出し方ですね。

また、当社の特徴的なものとして、DataChampionの設置も挙げられます。DataChampionとは、各事業部のデータに一番詳しくて分析できる人のことです。事業側がMySQLを叩いたりダッシュボードを整えたり、データの扱いに慣れることによって、事業の改善スピードを向上していきます。そして、開発側のアナリストチームは、AIやMLといった高度でテクニカルな知見が要求される業務に専念する。こういった染み出し方もしています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-7

小野寺:それでは、まとめです。当社では、何より一次情報を大切にしています。これに勝るものはなく、「Go, GENBA」の精神を持って、事業と開発が分断せず、お互いに染み出すようにしています。現場を無視した自己満足なデジタル化には陥りがちですが、そうならないよう心がけています。

開発は常に当事者意識を持ち、患者ファースト、オペレーションファーストの視点を忘れずに事業に寄り添います。デジタル×リアルの相乗効果を発揮し、患者様と医療機関を総合的にサポートすることで、持続可能な医療プラットフォームを実現していきたいと思っています。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-8

小野寺:最後に、ファストドクターでは一緒に働く仲間を募集しております。右下は当社のCTOで、CTO協会の理事も務める西岡です。こうした日本を代表するプロダクトリーダーが率いる開発組織で、日本のど真ん中である医療の課題に挑戦したい、心を燃やして仕事をしたいという方をお待ちしています。ご清聴ありがとうございました。 fastdoctor_eventreport_2025/1/7_middle_h2-2-9

関連記事

NEW

マルチプロダクトな開発組織で『開発生産性』に向き合うために試みたこと

マルチプロダクトな開発組織で『開発生産性』に向き合うために試みたこと

イベントレポート

NEW

開発チームから始める『学習する組織』に成長するための取り組み

開発チームから始める『学習する組織』に成長するための取り組み

イベントレポート

NEW

その開発、本当に利益につながる? エンジニアが考えるべき3つの問い

その開発、本当に利益につながる? エンジニアが考えるべき3つの問い

イベントレポート

NEW

セキュリティメーカーにおけるオンプレ&SaaSハイブリッド開発での生産性向上の取り組み

セキュリティメーカーにおけるオンプレ&SaaSハイブリッド開発での生産性向上の取り組み

イベントレポート

エンジニアリング組織の
パフォーマンスを最大化

Findy Team+はGitHubやJiraなど
エンジニア向けツールを解析することで、
エンジニアリング組織の生産性を可視化するサービスです。