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イベントレポート

プロダクト戦略徹底討論!プロダクト/事業特性でみる、戦略・組織・プロダクト基盤設計とは

プロダクト戦略徹底討論!プロダクト/事業特性でみる、戦略・組織・プロダクト基盤設計とは

2024年11月15日、ファインディ株式会社が主催するイベント「開発生産性Kaigi スタートアップが目指す、開発と事業成長の接続〜価値創造への挑戦〜」が開催されました。

本記事では、ラクスル株式会社で上級執行役員グループCTOを務める竹内 俊治さんと、株式会社タイミーで執行役員CPOを務める山口 徹さんによるディスカッション「プロダクト戦略徹底討論!プロダクト/事業特性でみる、戦略・組織・プロダクト基盤設計とは」の内容をお届けします。

このセッションでは、ファインディ株式会社 プロダクトマネジメント室の稲葉 将一がファシリテーターを務め、「ビジネスインパクト創出に向けた戦略上のレバレッジポイント」、「プロダクト戦略実行に向けた組織設計」、「継続的なグロースを実現するプロダクト基盤設計」の3つのテーマでお話いただきました。

■登壇者プロフィール

竹内 俊治(@104haru0903) ラクスル株式会社 上級執行役員 グループCTO

2002年に東京工業大学大学院を卒業後、在学中から関わってきたコンピュータグラフィックスを手掛けるベンチャー企業に勤務。IPOを経験した後、2011年に楽天グループへ転職し、カナダやシンガポールに赴任。帰国後、複数事業の開発責任者(General Manager)として、国内・海外拠点のマネージメントや子会社、子会社のPMIなどを含めて全体として400〜500人規模の組織を直接・間接に牽引。合わせて同社のメディア・エンタメ部門のデータ利活用の責任者も兼務。2022年にウェルスナビへ参画し、CTOとして成長ベンチャーの基盤・体制を強化。2024年2月より現職。趣味:トロンボーン

山口 徹(ZIGOROu)(@zigorou) 株式会社タイミー 執行役員CPO

東京工業大学工学部電気電子工学科を中退後、幾つかの会社を経て、サイボウズ・ラボ株式会社にてデジタルアイデンティティとブラウザ拡張の研究開発に従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーでMobageをはじめとしたゲームプラットフォームの開発に携わり、ソフトウェアエンジニアやアーキテクトとして複数のプラットフォーム開発を牽引。さらにスポーツ事業本部のシステム部門を管掌し、システムアーキテクト領域で専門役員を歴任。レイターのB2B SaaS スタートアップにおける取締役CTO兼CPOを経て、2023年5月より株式会社タイミーに執行役員VPoTとして入社し、同年10月からは執行役員CPOに就任し現在に至る。

■モデレータープロフィール

稲葉 将一(@bachio178) ファインディ株式会社 プロダクトマネジメント室

創造性豊かなデータ可視化を通じて、グローバルで勝つプロダクトをつくる。 早稲田大学卒業後、新卒でリクルートに入社。国内転職領域におけるプロダクトマネジメント、海外HR事業の事業企画等を経験し、Findyにジョイン。プロダクトマネジメント室長として、全事業の爆速グロースへコミット。

目次

RAKSULとタイミー、両社が展開する事業とエンジニア組織

――本日は「プロダクト戦略徹底討論」と題しまして、3つのテーマでトークセッションを進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

竹内:ラクスル株式会社、上級執行役員グループCTOの竹内と申します。本日はよろしくお願いします。

山口:株式会社タイミーで執行役員CPOをしている山口と申します。本日はよろしくお願いします。

――トークセッションに入る前に、各社のご紹介をいただきたいと思います。まずは、RAKSULの竹内さんからお願いいたします。

竹内:おそらく多くの方が、RAKSULは印刷の会社だと思われているかと思います。ですが、RAKSULは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンのもと、複数の事業体を展開させていただいています。

祖業である印刷・集客支援のプラットフォームの「ラクスル」から始まり、物流のプラットフォームの「ハコベル」、マーケティングのプラットフォームの「ノバセル」。そして、RAKSULグループとして最も最近スタートしたITデバイス&SaaS統合管理サービスの「ジョーシス」など、複数の事業を展開しています。 timee_raksul_eventreport_2024/12/05_middle_h2-1-1

竹内:このように複数の企業体を展開していますので、これらをどう有機的に連携するかというところが、現在RAKSULが考えていくべき技術的な戦略の骨子になっています。テクノロジー基盤として、中小企業の経営課題を解決するという観点で、諸サービス群をどう統合的にお客様に提供していくかということですね。

また、それと同時にRAKSULは積極的にM&Aを進めています。24年度では、既に複数のM&Aを実施し、新しくジョインしていただいた会社があります。そうした会社間で、どうグループシナジーをつくっていくかという、シナジー創出の仕組みとしてのプラットフォームも考えていかなければなりません。

さらに、25年度中にファイナンスサービスを立ち上げていくことを、つい最近アナウンスしました。このように、これからRAKSULの事業ポートフォリオは、ますます拡大していくものと考えています。  timee_raksul_eventreport_2024/12/05_middle_h2-1-2

竹内:これらを支えていくラクスルのテックカルチャーとして、Go Beyond、Think Architecturally、Make it Scalableの3つを、テクノロジー組織の価値創造のベースになる行動指針として策定しました。これらをベースに産業全体の効率化を進め、さまざまある事業体、事業群、もしくは業界において、モダナイゼーションを実行していきたいと考えています。  timee_raksul_eventreport_2024/12/05_middle_h2-1-3

――続いて、タイミーの山口さんからもご紹介をお願いします。

山口:タイミーは、スキマバイトサービスのリーディングカンパニーで、「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」ことをミッションに掲げています。タイミーは従来の求人サイトでも派遣でもなく、働きたい時間と働いてほしい時間をマッチングする、スキマバイトサービスです。2024年9月時点で導入事業者数は136,000企業、ワーカー数は900万人となっています。

タイミーのバリューをご紹介しますと、まずは「理想ファースト」。理想を先に掲げてから、そこに至るまでのステップを考える、バックキャスティングですね。そして、「やっていき」では挑戦を、「バトンツナギ」は仕組み化や自動化を、「オールスクラム」ではチームプレーを推奨しています。いずれも全社のバリューですが、プロダクトに関わる方にとっては、かなりなじみやすいカルチャーではないかと思います。

そして、タイミーのプロダクト組織については、チームトポロジーをベースに、ネーミングだけ少しSpotify Modelから借りてきて、階層的な仮想組織、マトリクス組織をつくっています。また、プラットフォームエンジニアリングが根付いたプロダクト組織でもあります。  timee_raksul_eventreport_2024/12/05_middle_h2-1-4

ビジネスインパクト創出に向けた戦略上のレバレッジポイント

――それでは、トークセッションに移りたいと思います。1つ目のテーマは、「ビジネスインパクト創出に向けた戦略上のレバレッジポイントとは?」です。経営レイヤーのお二人にご登壇いただいていますので、抽象度の高い戦略の部分から、事業や開発組織の連動について紐解いていけたらと思います。

竹内:では私の方から、グループCTOという立場ですので、各プロダクトというよりは、全体をどう設計するのかというところの思想から、まずお話できればと思います。先ほどの紹介でも触れた印刷EC「ラクスル」は、実はシステム上は紙印刷やノベルティ印刷、チラシ配布など、複数のサブサービスの有機的な連合体として、全体が構成されています。

印刷ECの「ラクスル」は、ある程度プロダクトマーケットフィット(以下、PMF)も終わり、ありがたいことに印刷ECではほぼNo.1になり始めているサービスです。しかし、それ以外のサービスである「ノバセル」、「ジョーシス」、「ペライチ」、「ハコベル」などでは、PMFがまだ実現できていないなど、いろいろなフェーズのサービスがあります。これをどうまとめていくのかというのが、RAKSULの技術的なチャレンジの1つです。

そこで考えているのが、このRAKSULのテクノロジープラットフォームで、表の左側がいわゆる購買調達のサービス郡、祖業の「ラクスル」を想定しています。真ん中が、「ノバセル」などのソフトウェアSaaSですね。そして、右側がファイナンスのサービスです。

これらをきちんとRAKSULグループで、平たく言うとRAKSULのエコシステムに統合する形で、どう事業を束ねていくか。そのためのベースとしてどのような基盤が必要なのか、という議論を今活発に進めていまして、あわせて基盤系の整備も進めている状態です。  timee_raksul_eventreport_2024/12/05_middle_h2-2-1

竹内:ビジネスインパクトの創出、そして戦略上のレバレッジポイントについてお話させていただくと、既にRAKSULは主にtoBのIDを270万近く保有しています。これをベースに各サービス間でどう連携を持って、それぞれ掛け算の成長を実現していくか。これがまず戦略上のレバレッジポイントとして大上段にあるものです。

それを実現するためには、当然IDを統合していかなければならないと思っています。あわせて、例えばデータレイク、データウェアハウスといったものの統合も進めていく。そのうえで、諸サービス群をどう成長軌道に乗せていくかという戦略を、今まさに立てているところです。

――M&Aなども進めてさらに事業拡大していくなかで、データレイヤーからプロダクト間や事業間のシナジーをいかに生んでいくかに注力されているということですね。一方で、タイミーさんは1つの事業を運営されている状況かと思いますが、山口さんいかがでしょうか?

山口:タイミーもスキマバイトサービスだけではなく、今だと「タイミーキャリアプラス」という正社員の紹介サービスを持っていて、少しずつ売り上げが立ち始めています。ただ、ラクスルさんのように、いろいろな領域に価値を提供している形ではなく、あくまでHR領域に閉じたポートフォリオになっています。

レバレッジに関して言うと、既存事業はPMFしていて、まだまだグロースする余地があります。主要なインダストリーとして、ロジスティクスや小売、飲食などが該当するのですが、そういったところの開拓はほとんど終わっている状態です。なので、これからはどちらかというとアップセルを狙っていく、あるいはクロスセル的な形で価値を提供して、より単価を上げていく動きになると考えています。

今度は別のインダストリーに対して展開していくという、マーケット開拓の文脈もあって、そういう意味ではまだPMFしていないとも言えるんですね。なので、単一のサービスでも、そのインダストリーの開拓状況によって、フィットのステージが違うという言い方ができるかなと思っています。いずれにせよ、まだまだ伸びるというのは大前提ですね。

それから、先ほど少し「タイミーキャリアプラス」の話題に触れましたが、そういった新規事業も基本的なレバレッジポイントだと考えています。

――インダストリーカットでどんどん事業を広げていくなかで、プロダクト組織としては今どういった課題やトライがあるのか、お聞きしてもいいですか?

山口:既存事業に関して言うと、大きく分けて2つ挙げられると思っています。まずは既存インダストリーにおいて、より価値を展開していくうえで課題になっていることを、どう解決していくかという話が1つですね。

もう1つは、新インダストリーにおいて、おそらく導入課題が主にフォーカスすべきところになってくるだろうと。今のプロダクトがすんなりPMFするとは考えていなくて、新しい価値を提供していかないとフィットしないインダストリーはあるだろうと考えています。

さらに言うと、やはりまだスキマバイトサービスというところに留まっているので、この幅をどう広げていくかですね。働き方はそれだけではないので。スキマバイトで提供している体験というのは、例えば応募のときに面接や履歴書が不要であるとか、思い立ったらすぐ働けるとか、シフトにとらわれないとか、すぐにお金がもらえるとか。

そういった価値は、働き方の長さや契約形態を問わず提供できうるものなので、特にワーカーサイドにおいて、価値をどれだけ広げていけるかというのは、大きな課題の1つだと言えると思います。

プロダクト戦略を実行するために、どう組織を設計するか

――続いて、「プロダクト戦略実行に向けた組織設計」についてお話を聞いていきたいと思います。まずはRAKSULの竹内さんから、先ほどお話いただいた戦略や方向性を実行するうえで、どのような組織設計を検討されているかお伺いしてもよろしいでしょうか?

竹内:タイミーさんとの比較で見ていくと、先ほど山口さんが述べられていたように、RAKSULの場合、事業ポートフォリオにかなり距離があるものがあります。そうしたなかで、やはりそれぞれのドメイン特有の知識やプロダクトの設計があると思っていて、各ドメインごとのある程度の自立性は必要だと考えています。

例えば、印刷ECの「ラクスル」でレベニューを上げていくには、印刷業界を理解していなければならないですし、広告の「ノバセル」で事業を伸ばしていくには、やはり広告ドメインの理解が必要です。これを私1人が全部担えるかというと、決してそんなことはありません。なので、これを社内ではバーティカルと呼んでいますが、各事業ドメインごとに、ある程度の主体性や自主性をきちんと与える組織設計にしています。

ですので、各事業ドメインごとにCTOがいたりVPoEがいたりと、そういう方向を今試行しています。組織はまだこれからつくっていくところですので、現状少しずつそのように進めているという状態ですね。

これとは別に、プラットフォームとしての基盤系の話が出てきました。この基盤系というのは、当然グループ全体を一気通貫、横串で見ていく立場になります。ですので、グループ全体の事業戦略をどう実行するか、そのための基盤として何を整備すべきかという思考で、直接的なマネタイズではないですが、グループ全体の価値創出という形でプロジェクトを進めています。

結果として、バーティカルとホリゾンタルで、KPIが2つに分かれてくる状態だと思っています。バーティカルの部分は非常にわかりやすいと思います。例えば、事業単体での収益性を高めるような指標、それからお客様対面のプロダクト設計や開発をいかに効率よく進めていくかという指標になります。

横串の部分では、RAKSULグループ全体の価値として、会員の総数であるとか、まだ明確には決まっていませんが、例えばクロスユース率を高めていくとかですね。もしくは、M&Aの実施後にどれだけ早くPMIを実行できるか、といった部分が指標になってくる。こうした異なるKPIを持った2つの組織で構成しています。

――タイミーの山口さんからも、先ほどお話いただいたプロダクト戦略実行に向けての組織設計という部分について、お話いただけますでしょうか?

山口:我々はまず、事業の流れに沿って組織設計しています。ラクスルさんも同じだと思いますが、ツーサイドマーケットと言われる両サイドに顧客がいる形、いわゆるリクルートでいうリボン図のようなビジネスモデルになっています。我々の場合だと、働きたいワーカーと、働き手を求めている事業者や店舗、という2つの顧客です。

Amplitudeの「ノーススタープレイブック」におけるゲームタイプで言うと、ワーカー向けは、取り引きが多ければ多いほど価値が出るトランザクションゲーム。つまり、仕事が簡単に見つかったり、たくさん働けたりするほどいいということですね。事業者や店舗向けは、達成したいタスクを生産性高くこなせるほど価値が出る、プロダクティビティゲーム。このように我々は定義していて、この2つのゲームタイプに応じた組織設計になっています。

事業者側に関して補足的な説明をすると、やはり事業の運営上、必要な人手を集めなければならないし、集めるだけでなく生産性が高い状態で、コスト意識を持った仕事をしなければなりません。さらには、より付加価値のある仕事によって、売り上げの拡大を達成していただきたい。それこそまさに生産性の問題で、そういったことを支えるサービスであると言えます。

当然ながら、そういった生産性を達成するためには、ワーカーが来てくれなければならないし、いろいろなスキルを持ったワーカーとのスキルマッチも必要です。そのマッチングまで含めた全体の価値の流れがあり、チーム間でその一連の流れのフィードバックがある設計なので、一定以上のインタラクティブ性が必要になっています。

そうした前提をもとに、ロードマップはイニシアチブを並列に解いていくことを基本スタンスとしていて、チームトポロジーを参考にしながら組織設計をしています。価値を提供していくフローのなかにストリームアラインドチームがあり、認知負荷を下げてフロー効率を高めるためのプラットフォームチームも存在しています。

――両社それぞれ、意図や戦略に沿った組織設計をされていることがよくわかりました。RAKSULの竹内さんからは、各事業の自立性と横断的な部分でのシナジーのお話がありました。理想としてはそうである一方、なかなか噛み合いが難しい部分もあるのかなと思いますが、いかがでしょうか?

竹内:社内でも、やはりそういう懸念はあります。例えば、個別の事業の成長とグループ全体の最適化、どちらを優先するのかという話ですね。これは複数事業を展開している企業体であれば、おそらく共通した課題なのかなと思います。RAKSULはそこを今、グループ全体の最適化に舵を切ろうとしているところです。

もちろんグループ全体の最適化に舵を切ったところで、これが未来永劫続くというわけではありません。例えば、事業を取り巻く環境であるとか、やっぱり現実問題として短期PLを伸ばさなければならないとか、そういった部分でのバランスは出てくると思います。

ただ、過去の事業の立ち上げ方からの反省もありまして、一つひとつの事業をきちんと起ち上げていくことは、これまでの競争力だったと思っています。ただ、それだけでは足りないんですね。

大きく聞こえるかもしれませんが、RAKSULがメガベンチャーになっていこうと考えたとき、単純にいろいろな事業を足し算するのでは、おそらくそこには届かない。ですので、今はグループ全体の最適化というところをベースに考えています。

――さまざまなフェーズがあるなかで、今は全体最適にフォーカスされていると。続いて、タイミーの山口さんにお聞きしたいのは、事業のグロースが続くなかで、戦略の変化もあると思います。そうしたとき、プロダクト組織側でも組織の考え方や設計の仕方に変化はありますか?

山口:ありますね。例えば、既存事業における1つの課題は、よりグロースするための施策です。ただ、イニシアチブベースでは並列に解いていくというスタンスなので、原則どのチームが解いてもいい。ですが、グロースはもう少し小さな粒度のスタックを積み上げていくものだと思うので、集中的に課題解決するなら、おそらく専任のチームを置いた方がいいという考え方になっていくと思います。

それから、我々はプライオリティの付け方においてはCost of Delayを使って、インパクトとアージェンシー(緊急度)の掛け算をしています。これを単純に適用すると、かなりビジネスドリブンに施策の優先順位が決まるので、小さな施策が打ちづらくなってしまうんですよ。

一方で、やはり顧客にとって信頼できるサービスであることは非常に大事です。なので、そういったスタックをビジネスインパクトとは関係なくやっていく、専門のCREチームを立ち上げていくことも必要になるので、必ずしも組織設計が今までと同じになるわけではないと思っています。

継続的なグロースを実現するためのプロダクト基盤設計

――最後のテーマは、「継続的なグロースを実現するプロダクト基盤設計」です。直近では、立ち上げ期からマルチプロダクトを持つコンパウンドスタートアップの考え方もあり、特にプロダクト基盤の活用が注目を浴びています。タイミーの山口さんから、今どのような部分を考えているかお聞きしてもよろしいでしょうか?

山口:我々はおそらくHR領域をしばらくやっていくだろうと考えると、基本的には隣接するバリューチェーン上に価値を提供していく考え方になると思うんですね。なので、事業シナジーやデータの類似性があるなかで事業展開していくという意味で、おそらくコンパウンド戦略をやっていくのではないかと考えています。

また、今はツーサイドマーケットなので、そういったところのアカウントをきちんとした基盤にしていく必要性があると思っています。あとは、それぞれの顧客において重要な関心事が必ずあるはずなので、そういったデータも顧客基盤を中心に集中的に管理したり、あるいはその履歴を貯めたりしていきたいですね。

そうやって貯まったデータの活用も同様にやっていく必要があって、今も取り組んでいますが、データ基盤をもっと強くしていきたい。データは早く貯めれば貯めるほど、それだけでアドバンテージになると思うので、そこに機械学習やAIを活用して、プロダクトの価値を高めたり業務オペレーションを洗練したりしていきたいと思っています。

特にスキマバイトサービスは、戦略に差別化がつけづらいフェーズになっていると思っていて、いろいろな業務のオペレーションエクセレンスを磨いていくべきフェーズなのかなと考えています。

――プロダクト基盤となる部分を設計していくうえで、今課題になっていることはありますか?

山口:ビジネス側のアカウント基盤の方が、圧倒的に概念が難しいというのがあります。toCは個人なのでシンプルなのですが、相手が店舗や事業所だったり、さらに上位概念として企業、ブランド、フランチャイズなど、いろいろイレギュラーなケースがあります。そうしたまとまりの概念自体も難しいし、そのなかでの権限設計も非常に難しい。まだ着手していないのですが、そういったところが結構なハードルになるだろうなと感じています。

――RAKSULの竹内さんからも、継続的なグロースを実現するプロダクト基盤設計について、現在の設計思想やトライの状況などいかがでしょうか?

竹内:まず山口さんの今の話、ものすごく共感できます。おそらくRAKSULとタイミーで、今かなり共通した視点を持っているのが、このトピックなのかなと。なので、僕のコメントはほぼ山口さんがおっしゃったコメントにかなり近くなります。

そのうえで、タイミーとRAKSULの違いってなんだろうと考えていたんですが、おそらくタイミーさんは連続したバリューチェーンのなかで、隣接領域に染み出していくために、ちゃんとIDをつくっていく構想があるのかなと思いました。

それに対してRAKSULはこれまで、一度飛び地をやってみて、そのなかでどれだけ顧客価値を作り出せるかという発想でやってきたと思っています。ですので、隣接領域に染み出していくのか、腕を伸ばしてみて、その間にいるお客様に対して統合的な価値を提供していくのか、その上り方の違いかなと思いました。

ただ、やはり目指すプロダクトの技術的なチャレンジ、それこそtoBとtoCで構造が違いますよねといった話は、本当におっしゃる通りだと思います。

――こうしたお話を受けて、山口さんいかがでしょうか?

山口:規模感が近くなってくると、やはり打ち手が似通ってくるものなのかなと思いますね。だいたいの会社でやることが一緒なんだろうと思うと、もっとこうしたところを効率化するための枠組みが発展していくといいなと。なぜみんな同じようなものをつくっているんだろうと思ってしまいますよね。

竹内:結局、同じ考えに収斂するところが大きいだろうと感じます。需要がある程度大きくなってくると、隣接領域や新しいチャレンジ、事業の多角化といったコンテキストで事業ポートフォリオを広げていきましょうというのは、どの会社さんもあるかと思っています。

そういったところで、RAKSULやタイミーさんの考え方を取り込んでいただいて、「こういう形で広げていく考え方があるんだ」というのが、このセッションを通して伝わればいいなと思いました。

――お話しいただいたように、一定のグロースをすると課題が似通ってくるところは、両社のお話を聞くなかで、皆さん感じていただけたのではないかと思います。ぜひタイミーさん、RAKSULさんのお話を参考に、事業やプロダクトのグロースにトライいただければと思っております。それでは最後に、お二人から一言ずつお知らせをお願いします。

竹内:RAKSULでは、次々に新しいチャレンジをしています。一緒にチャレンジしてくれる仲間を絶賛募集しておりますので、RAKSULに少しでもご興味持っていただいた方がいらっしゃれば、ぜひご応募ください。

山口:タイミーではエンジニアだけでなく、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、データアナリスト、データエンジニア等々、幅広く募集中です。まずはカジュアル面談からお待ちしております。

――本セッションは以上とさせていただきます。竹内さん、山口さん、本日はありがとうございました。

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