急拡大を支えるカギは成長の可視化と現場ニーズのマッチング、組織力を武器に星野リゾートが目指すグローバル展開
独創的なテーマが紡ぐ圧倒的非日常「星のや」、ご当地の魅力を発信する温泉旅館「界」、自然を体験するリゾート「リゾナーレ」、テンションを上げる都市ホテル「OMO(おも)」、ルーズなカフェホテル「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に、国内外に59施設を展開するホテル運営会社の星野リゾート。
エンジニア組織における個人の振り返りや組織の課題発見に、エンジニア組織支援クラウド「Findy Teams」を活用いただいています。
今回は、星野リゾートの情報システムグループでエンジニアチームリーダーを務める、藤井崇介さんにインタビュー。開発チームにおける課題や取り組み、「Findy Teams」導入のきっかけなどについて伺っていきます。
目次
SIerを10年経験した後、2018年から星野リゾートへ
――まず最初に、簡単なご経歴と現在の役割について教えてください。
藤井さん:私はSIerに10年ほどいて、Javaメインで受託開発をしていました。その中では、Webシステムや基幹系システムの開発をしたり、最後はコンサルティング的なこともしたりしていました。そこから、家庭の都合もあり転職を考えたときに、仕事で繋がりのあった星野リゾートに声をかけてもらい、2018年に入社しています。
当時はエンジニアがほとんどいない状況でしたが、会社としては内製化を進めたいという話がありました。内製化と言っても、最初はコードの基盤までは社員が担いつつ、パートナーにも協力いただいて開発するといったところから始め、割合をだんだん内部に寄せていったり、開発する範囲を少しずつ広げたりしてきました。
今は社員のエンジニアが18名で、チームが6つほど。私はエンジニアリングマネージャーとして、CIOと共にエンジニアのマネジメントや評価もしています。とはいえ、私自身がプロジェクトに入ることもあり、施設やマーケティング部門からあがる課題や要望に対して、どうしたらいいかといった相談に乗ったり一緒に進めたりもしています。
――6つほどのチームがあるとのことですが、どのような形でチームが分かれているのでしょうか?
藤井さん:フロントやサーバーサイドといったチーム分けではなく、顧客に提供する価値をベースにチームを分けています。大きなチームとして、まず1つは今ある予約システムの保守開発をしながら機能追加をしているチーム。もう1つは、数年レベルで行おうとしている基盤システムの入れ替えを担当するチームがあります。
その次に大きいのが、CMSをつくっているチーム。そして、財務や人事、総務などのスタッフが使うシステムの開発をしているバックオフィスチームがあります。また、ここ数年チェックインの自動化を進めており、このような新規プロダクトをつくっているチームもあります。まだ構想を練っている段階ですが、顧客がチェックインしてからチェックアウトするまでの顧客体験価値を高める施策を一緒に考えています。
現場のことを知り、手を動かす人も一緒に考える
――星野リゾートならではの特徴や面白さについて教えてください。
藤井さん:実際に手を動かす人も一緒に考えるところが、一番の面白さだと思います。システム開発で規模が大きくなると、考える人とつくる人が分かれてしまいがちです。しかし、良いアイデアは、やはりシステムを使う現場にありますから、それでは現場でしか得られないアイデアや情報がフィードバックされなくなってしまいます。
星野リゾートには、フラットな組織文化という考え方があります。年齢や性別、役割に関係なく双方向のコミュニケーションを取ることでひとりひとりのスタッフが自ら考え、アイデアを発信し、議論を重ねる文化で、新しいサービスを生み出す源泉となっています。それは、システム開発においても重要な視点であると意識しており、実際につくる人にも一緒に考えてもらうようにしています。
また、手が足りない部分はパートナーの人たちを含めて仕事をしていますが、そういったパートナーの人たちにも一緒に考えてもらうことを意識しています。
――開発メンバーが、実際にホテルで働いている方々とコミュニケーションしながら進めていくのでしょうか?
藤井さん:施設の状況をヒアリングしたり、まとめたり、サポートする部門が社内にあるので、まずはその人たちと話すことが多いですが、システム導入時の大事な場面ではエンジニアも現地に行って、施設に足を運ぶようにしています。
私たちはブライダル事業もやっていて、今そのシステムの置き換えを検討しています。過去に、外部ベンダーに開発をお願いしたシステムを利用していることもあり、言われてもわからないことが多かったんです。そのため、施設ではどういうことをしているのか、実際に見に行ってもらいました。
行ってみると、Excelで運用しているものがたくさんあったり、「システムが老朽化して大変なんです」と言われたものの、そもそもシステム化すらされていなかったり、といったことが多くあったようです。やはり実際の現地の課題を知った上で解決することができるというのは、すごくやりがいがあると思います。
――実際入社される方々は、どのような部分にモチベーションを持っていらっしゃる方が多いんでしょうか?
藤井さん:単純に技術を使ってものをつくりたいという人は、どれだけ技術力があったとしても採用には至っていないケースが多いです。そういう人は他でも活躍できますし、技術力に強みを持っていても、私たちの会社に愛着を持って長くいてくれると思っていません。
私たちが提供できる価値は、現地で得られた情報や課題などに対して、自分たちで考えて行動できるところです。なので、事業自体に興味がある方もいますが、それ以上に、施設のスタッフが困っていることを、自分たちの技術力を使って解決していく。そういうところにモチベーションを持っているメンバーが多いです。
圧倒的な成長スピードと変化の中で、ニーズに応える
――開発チームとして今感じている課題や、それに対する取り組みについて教えてください。
藤井さん:課題は言い出したらきりがないですね(笑)。まず大きな背景として、私が入社したときよりも、会社が圧倒的に速いスピードで成長しています。当時は、1年に1、2施設くらいのペースだったのが、今はもう1年に5施設も6施設も増えているんですよ。
単に施設数が増えているだけでなく、会社は新たな挑戦をしています。その1つは、海外への展開。今後海外にも施設が増えていく中で、私たちはグローバルに通用するシステムをつくっていく必要があります。
また、コロナ禍で経営が困難になった施設の運営を任していただくことが多くなったのですが、施設やバリエーション、新規案件なども増える中で、コモディティ化しないホテル運営を見出すために、「新しい宿泊とは何か」を考えなければならない。今までやっていたやり方を、大きく変えながら増やしていく、ということが1つのポイントになっています。
基本的には1年間でリソースを検討しますが、最近はもう半年経ったらガラッと変わっていて。会社の方針が変われば優先度も変わりますし、特に最近はGoToトラベルのような国の施策もあったり、チェックインを例にとっても新型コロナとの生活で非接触が当たり前になったなど、本当に大きく変わってきました。増えるスピードも変わるスピードも速くなっているので、事業変化のニーズに素早く応えることは1つの課題になっています。そして更に海外での施設運営やチャレンジも増えています。
――グローバルに対応したシステムをつくるにあたって、言語以外には例えばどういったところが課題になるのでしょうか?
藤井さん:基盤になっているPMSというホテル管理システムがあるんですが、その施設で使われるPMSとなかなか繋ぎ込めなかったりとか。あとは、日本とは異なる税制度やチップ文化への対応、時差の問題などもありますし、課題は多岐に渡りますね。
急拡大する組織の可視化に「Findy Teams」を活用
――「Findy Teams」を導入いただいたきっかけや、それまでに感じられていた組織の課題があれば教えてください。
藤井さん:情報システムの組織は急激に拡大していて、2015年は4名だったのが、私が入社したときは20名くらい、今はもう60名くらいになっています。
組織全体が大きくなって、エンジニアとPO、運用保守、インフラなどのエンジニアでない人たちを1チームにして協働しています。そのなかで、エンジニアメンバーは社内だけで18名、外部のパートナーさんを含めると30~40名になります。少し前までは私1人で全部見れていましたが、この規模になると難しくなってくるんですよね。
加えて、働く拠点が分かれていることもあり、コミュニケーションも難しくなってきます。そのためスクラムを導入したり、さらにそれをスケールする形として、Scrum@Scaleのノウハウを取り入れたりして、コミュニケーションを取るようにしてきましたが、細かい部分は見れませんし、何よりも開発組織の生産性が気になるんですよね。
「Findy Teams」を導入したきっかけは、まさに生産性の可視化にありました。やはり進捗とかって、どうしても人の感覚が入ってしまうものですから、人の感覚が入っていない実際の数値が取れるのは重要ですね。スクラムでは、安定しているかどうかを重視しているのですが、「Findy Teams」を入れることで、その数字も取れるようになりました。
また、私が外部のパートナーさんの状況まで把握しきれない部分のアクティビティを定量化したことで、面談で反映できるようになりました。そういった面で、簡単に可視化できるところがすごく役に立っていますね。
――「Findy Teams」で見られるアクティビティの活用についてはいかがですか?
藤井さん:「Findy Teams」のアクティビティは、すごく役に立っています。みんな安定していないことを感じていても、その原因をつかむのが難しく、なんとなく「タスクが難しかったから」となりがちでした。
ところが、アクティビティが見られると、「コミット単位がもっと小さい方がいいんじゃないか」というような仮説が立てられる。その仮説を検証して改善のアクションを取ると、数値として実感できることが、アクティビティを見るメリットなのかなと思います。
あとはチーム・個人としてどこを目指せばいいか、わかりやすいのもいいですよね。「Findy Teams」のアクティビティの数字が上がって、「でも何か自分たちうまくいってないな」と感じたら意味がないですが、不思議なことに、あの通りにやって数字が良くなると、なんだか気持ちよく開発できているんですよね。
もう1つ、「Findy Teams」を導入した副次的な効果ですが、「Findy Teams」を使っている人たちの事例を見ることで、他社がどういう取り組みをしているかに目が向くようになりました。
ANDPADさんやNewsPicksさんの事例を見て、「やっぱりみんなFour Keysに注目してるよね」とか「SREって重要だよね」とか。それを見て、「だから私たちもちゃんとやろう」となるので助かっています。
――開発生産性等を数字で見ることに対する抵抗感のようなものはなかったのでしょうか?
藤井さん:オープンであるべきだし、情報共有することに抵抗はなかったですね。それに、私たちは数字を評価と紐付けていないんです。そこがうまくいくポイントなのかなと思います。星野リゾートの評価制度はもともと、目標に向かって行動する姿やアクションを評価する文化が根付いていることもあります。
私自身、スキルマップもそうですが、何かの指標を評価に繋げた瞬間、うまくいかなくなると思っています。その数字を上げるために無茶をするから。これは昔から代表の星野も言っていて、そういう指標を必達目標にしたり、評価に紐付けたりしないように気をつけています。
”世界で通用するホテル運営会社”に合う開発チームに
――今後目指していきたい事業や開発チームの姿について教えてください。
藤井さん:私たちはまず第一に、「世界で通用するホテル運営会社になる」というビジョンがあります。なので、当然そこに合うような開発チームを作りたい。宿泊業は基盤が老朽化しているために、現地のオペレーションが非生産的になっている場合もあり、それを解決できるチームをつくりたいと思っています。
宿泊業といっても、私たちが扱っている分野は幅広く、予約や現地の体験から、財務などの裏側まであるので、それらすべてをつくりたいと思っています。
そのためには、たくさんあるチームとコミュニケーションを取りながら、お互いに価値を高めるために切磋琢磨していきたい。さらには、その中でエンジニアだけでなく、施設の最前線にいる人たちを巻き込んでいって、壁のない世界をつくっていきたいですね。
――御社には、どういったエンジニアの方がマッチすると思いますか?
藤井さん:言われたものをつくるのではなく、いろんな人の話を聞いて、自分から考えて提案できる人が向いていると思います。私たちの会社にはいろんな立場の人がいて、エンジニアではない人たちもたくさんいます。なので、多様性を重視している方も合うと思いますね。
――それでは最後に、星野リゾートに興味を持つ方に一言メッセージをお願いします。
藤井さん:私たちの会社は大きくはなってきましたが、世界レベルで見れば、まだまだすごく小さな企業です。そういったところに挑戦していきたい人たちに、ぜひ入社してほしいと思っています。経験よりもマインドが重要だと思っているので、そういう方にぜひ挑戦していただきたいです。
――藤井さん、本日はありがとうございました!
※Findy Teamsのサービス詳細は以下よりご覧いただけます。 https://findy-teams.com/service_introduction