Four Keysを人事評価に活用。 Findy Team+から従業員が納得する評価制度を構築するネクサスエージェントの取り組みとは?
不動産を中心とした金融資産の流通において、テクノロジーを活用して新たな価値を創出、提供している株式会社ネクサスエージェント。同社では、エンジニア組織における個人の振り返りや組織の課題発見に、エンジニア組織支援クラウド「Findy Team+」を活用頂いています。
今回は、同社で開発課の課長としてエンジニアリングマネージャーを務める小笠原さんにインタビューを実施。開発生産性の計測に取り組んだ背景や人事評価にFour Keysを組み込んだ事例、「Findy Team+」の導入理由についてお話をうかがいました。
目次
ミッションは「日本一の開発組織をつくる」こと
──最初に小笠原さんの主な経歴や、現在の業務内容について教えてください。
小笠原:ファーストキャリアはハードウェア技術者でした。その後、システム開発会社に転職してソフトウェア開発を経験し、クラウドインフラの世界に関心を持つようになったことをきっかけに、2020年12月にネクサスエージェントに転職しました。
以前はクラウドエンジニアとして働いていましたが、2024年1月から開発課の課長に任命いただき、エンジニアリングマネージャー職に就いています。経営陣と現場をつなぐポジションとして、採用にも一部関わっています。また現場でも手を動かしていて、IaCやterraformを使ってAzureを構築したり、GitHub ActionsやCI/CDの自動化も担当しています。
──プレイングマネージャーとして活躍されているのですね。開発組織の人数や体制ついても教えていただけますか。
小笠原:全体の開発人数は約20名で、開発手法はスクラムです。エンジニアが参画しているプロダクトが4チームほどあり、1プロダクトに1スクラムチーム、中の人数は必ず9名以下、かつ必ず兼務なしという体制にしています。
──組織のミッションも教えてください。
小笠原:全社的には「不動産を通じて、価値を提供し、世界を変えていく」をミッションとしていて、不動産業界が抱える情報の非対称性といった課題の解消を目指しています。
代表の岩田からは「目的を達成するためにはネクサスエージェントが日本一の会社になる必要がある。各部署がそれぞれ日本一になって欲しい」と伝えられており、開発組織には「日本一の開発組織をつくる」というミッションが課せられています。
ミッション達成に向けて、開発生産性の計測がスタート
──開発生産性の計測に取り組もうと思われたきっかけと「Findy Team+」の導入理由を教えてください。
小笠原:開発生産性の計測は、ミッションを達成するために必要不可欠なものでした。「日本一の開発組織」と一言でいっても、いろいろと定義できますよね。そうなると目的がぶれてしまいますし、組織として全員が同じゴールを目指すことが難しくなってしまいます。
目標を明確にするためにも、Four Keysの最上位(Elite)チームを目指すことにしました。一度にさまざまな施策を進めるとパニックになってしまうため、前任の河野(現 取締役CTO)が「まずはFour Keysの1指標:デプロイ頻度に焦点を当てて取り組もう」と判断しました。 指標改善には可視化が必要だと考えていたので、手間なく可視化ができる「Findy Team+」を導入することにしました。
──Four Keysを導入することになった経緯についてもお話いただけますか。
小笠原:DORAの調査レポートをもとに、経営目標を達成するためには、開発生産性を向上することが重要だと経営陣に伝えました。その際に、経営目標の達成と開発生産性の向上は必ずしもイコールの関係ではないという話もしています。全社レベルでのボトルネックを特定するためにも、開発生産性の可視化が重要だと説得した結果、Four Keysの導入が決まりました。
──全社レベルでのボトルネックの特定というと?
小笠原:例えば経営目標が達成できなかった場合、経営陣は原因がどこにあるのかを特定する必要があります。そのとき、開発生産性を可視化していれば、「Four Keys はオールゴールドを達成しているので、開発組織ではなく他部署に原因がある」と言えるわけです。それは逆も然りで、Four Keysがオールゴールドになっていない場合は、開発組織に何か原因があるかもしれないと推測できますよね。
数字にはさまざまな原因が絡んでいるため、ボトルネックを特定するのは難しいことではありますが、経営における一つの判断軸として開発生産性を可視化しておくのは重要なことだと思います。
会社としてのボトルネック特定や人事評価にFour Keysを活用
──Four Keys 以外に定量指標として設定されているものはありますか。
小笠原:Four Keys以外にも、データの量/品質やSRE的指標についても定量目標を掲げ管理を行っています。データの品質や量が重要であるということは、AI時代においてもはや説明不要だと考えています。SRE的視点については、CICDを10分以下にするといった開発者の心理的負担や、サービス信頼性を起点にした運用のベストプラクティスが非常に素晴らしいと考えています。開発組織の立ち上げが2021年6月で、まだまだサービスの運用には課題があります。数多ある目標の中からボトルネックを特定して、一つずつ改善を進めていきたいですね。
──現在はエンジニアの皆さんの目標数値として、Four Keysを設定されているというイメージでしょうか。
小笠原:おっしゃる通りです。エンジニア一人ひとりの目標を設定をする際に「スペシャリストを目指す」「マネジメント職に進む」といった二つのパターンが考えられます。
スペシャリストを選択された方々は育成目標にFour Keysの数値を設定していて、人事評価を行う際はプルリクエストの件数やデプロイ頻度などの数値をもとに昇格できるかどうかを判断しています。テックリードなどを目指す場合は、Four Keysだけでなく他の観点も含めて評価しています。なお、マネジメント職を希望された場合は、Four Keys 以外のKPIを設定することもありますね。
──Four Keysを人事評価にも組み込まれているのですね。Four Keysを評価に組み込む上で、何か大変だったことはありますか。
小笠原:Four Keysだけではなくマネジメント全般で言えることなのですが、会社と個人の方向性、目標を擦り合わせるのは難しいと改めて感じました。私としては努力した人が報われる仕組みをつくりたいと考えているものの、会社として達成すべきこととエンジニア個人のキャリア目標が必ずしも合致するとは限りません。
しかし、せっかく努力して良いものを開発したのに、会社に評価されなければ開発者体験が良いとは言えないでしょう。マネジメントをするようになって半年ほど経ちますが、会社と個人の目標のギャップを埋めるのには未だに苦戦することがありますね。
「Findy Team+」や承認フローの変更を経てFour Keysも向上
──小笠原さんが以前に所属されていたTDSチームの「Findy Team+」を見ていると、ここ1年でデプロイ頻度が伸びており、導入当初から比較すると3倍まで数字が改善されています。理由はなんだと思いますか。
小笠原:印象に残っているのは、開発のメンバーには高い目標を設定すると同時に、経営陣が開発組織に大きな期待を寄せてくれていると率直に伝えたことです。高い目標設定が個人のキャリア/経営陣の期待に応えることになると伝えました。
加えて、CI/CDの高速化のために専用のサーバーを立てるなど、経営陣が求めるばかりではなく支援する姿勢を示してくださったことで、すごく一体感が高まりました。また、承認プロセスを変更し現場に裁量権を与えてくださったことも効果的だったように思います。
──承認プロセスの変更について詳しく教えてください。
小笠原:計測を始めた当初は、リリースをするためには企画部門の次長に承認してもらう必要がありました。
しかし、承認は仕様通りの実装がなされているかの確認です。加えて自分が書いたコードのことは、書いた本人が一番理解しています。せっかく内製開発するのであれば、エンジニアが企画に寄り添って、同等のレベルまでビジネスを理解する。そして作ったソフトウェアは中身まで熟知しているエンジニアがチェックするのが最善だと考えました。
そこで、私がまだ課長職ではないメンバーだったときに次長を説得して、次長の承認を待つのではなく、現場判断でリリースできる仕組みに変更したのです。それによってエンジニアたちは自分たちのつくるものにより責任を感じてくれるようになりましたし、ビジネス理解も深まりました。次長の負担が減ったことで組織拡大に踏み切る決断も下すことができました。
「Findy Team+」を通して開発組織のプレゼンスを高める
──これまでの取り組みを通して、開発生産性の計測および「Findy Team+」を導入したことによるベネフィットはどのようなところにあると思いますか。
小笠原:人事評価におけるポジショントークがなくなり、評価軸が明確になったのはよかったなと思います。
具体的なエピソードとして、部下の一人に私の同級生がいて、彼の評価をする際に「エコ贔屓しているのではないか」と周囲のメンバーに疑われてしまう可能性がありました。
これは当然のことだと思います。しかし「Findy Team+」でFour Keysを可視化したことによって、定量的に評価していることが明確となり、そのような問題を解決できたのです。 また、Findy Team+導入以前は1on1でエンジニアが担当したプルリクエストなどに飛んで、Githubのコードを一緒に見ていました。検索結果のまま実装しただけなのか、理解したうえで実装したのか、説明できるかといったことを評価の軸にしていました。
この活動自体は今も変わらないものの、単純に手間が減りましたし、Github上の活動のすべてを集計/可視化するといったことは人力では不可能でした。
──可視化の取り組みについて、今後の展望を教えてください。
小笠原:オールゴールドを達成しているチームは、生産性を維持しながら育成など次のステップに進んでもらいたいなと考えています。オールゴールド未達のグループに関しては、引き続き改善に取り組んでもらいたいなと。
開発組織全体としてはより高度なFindy Team+の利用をメンバーたちにも広げていきたいと考えています。現在はスクラムマスターなどリーダー陣が利用するに留まっていますし、KPT振り返り/ミーティング分析などが積極利用できていません。Findy Team+の可視化を組織に広げて、毎日全員がFindy Team+を見て仕事を始める/終える。組織も個人も、自分を客観的に振り返り改善する、自律自転型組織を目指したいですね。
──最後に、組織のアピールポイントや一緒に働きたいエンジニア像を教えてください。
小笠原:当社では経営戦略として明確にAI拡張開発の導入/検証/推進を掲げ、生成AIとともに開発を行う「AI拡張開発」を推進しています。従来のアジャイル開発の基本姿勢を守りつつ、生成AIを使って生産性を改善し、生成AIを組み込んだプロダクトへ投資できていることは、当社の強みでもあります。
人事評価は四半期ごとに行っており、1クォーター、2クォーターと連続で昇給したメンバーもいます。努力してスキルを向上している人は正当に評価する仕組みができていて、やりがいを感じられる環境であるのもポイントです。
また生成AIによってソフトウェアを作るハードルが下がっており、より顧客の目線に立って「求められているもの」を理解したうえで、「それが作れる」エンジニアの必要性が高まっていると考えております。AI拡張開発によって一人のエンジニアがアウトプットできる総量は増え、初学者にも知識の高速道が整備されつつある今、「ソフトウェアをただ作るのではなくプロダクト理解の上で、最高のソフトウェアをAIとともに作れる」そんな志を持つ仲間を求めています。
──小笠原さん、ありがとうございました!
※ネクサスエージェントでは、エンジニアを募集しています。
https://findy-code.io/companies/1066
※「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。