海外拠点で、言語の壁を超えた改善文化の形成へ。定量数値から自発的に振り返り、具体的な改善策に取り組むパーソルキャリア テックスタジオ ベトナムの開発生産性向上への取り組み
転職支援や求人メディアをはじめ、幅広い人材サービスを展開するパーソルキャリア株式会社。同社では、エンジニア組織の振り返りや課題発見に、エンジニア組織支援クラウド「Findy Team+」を活用しています。
今回は、パーソルキャリア初の海外開発拠点「PERSOL CAREER TECH STUDIO VIETNAM COMPANY LIMITED(パーソルキャリア テックスタジオ ベトナム)」で開発組織をリードする、ゼネラルマネジャーの志田共晶さんにインタビュー。「Findy Team+」を活用して、開発生産性の可視化や改善に向けてどのように取り組んできたか、お話を伺いました。
目次
パーソルキャリア初のHRテックに特化した海外開発拠点
──最初に志田さんの主な経歴や、現在の業務内容について教えてください。
志田:民泊サービスのスタートアップ在籍時に、開発リソースを増強する目的でベトナム現地法人を立ち上げ、日本の開発チームと連携しながら、ベトナム人エンジニアと共にWebアプリケーションの開発に従事していました。
その後、どこで暮らしていても「はたらく」を自分で作り出せるようになりたいとの思いから、「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」というパーソルキャリアのミッションに共感し、2020年にパーソルキャリアへジョインしました。 2022年にパーソルキャリア初の海外拠点となるPERSOL CAREER TECH STUDIO VIETNAM(以下、PCT社)の発足メンバーとなり、現在は現地ゼネラルマネジャーとして、エンジニアリング組織づくりを通じて、日本だけでなくグローバルでのパーソルキャリアのミッション実現に努めています。
──御社の組織規模やミッション、開発チームの体制について教えていただけますか?
志田:PCT社のエンジニア人数は40名くらいです。 全社的には「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」をミッションとしていて、人々が自分の意志でキャリアや人生を選択できる社会の実現を目指しています。 個人のミッションとしては、日本国内だけでは採用が難しい状況の中で、プロダクトの成長を止めないために、ベトナムをはじめとする海外拠点で優秀な人材を採用し、グローバルなチーム作りを進めることです。
開発チームの体制としては、エンジニアチームの一つとして個別に開発することもあれば、混合チームとして開発するケースもあります。 日本側との連携があるため、開発チームには必ずPCT社側からブリッジSE(※略称BSE)とチームリードないしはテックリードが入り、全体で3〜6名程度のチーム体制になります。
チームの中には、BSEが企画カウンターパートとして要求定義、要件定義などの上流工程を担っているチームもあります。
チームの健康状態を維持するために、ベトナム拠点のパフォーマンスを定量的に可視化
──開発生産性の計測になぜ取り組んだか、「Findy Team+」の導入した理由を教えてください。
志田:PCT社では、すでにFindy Team+を導入していたパーソルキャリアと連携して開発を行っておりました。 その中で、パーソルキャリアとPCT社で、共通の指標を用いて共同で開発生産性を計測していく動きがあり、導入に至りました。
後発的な導入ではありましたが、個人的には、パフォーマンスを可視化できるFindy Team+の導入は非常にありがたかったです。
というのも初のベトナム拠点であったため、日本で勤務するエンジニアの多くは初めて海外の方とはたらくこともあり、難しさを感じている方が一定数いらっしゃいました。 そこで、立ち上げ初期からFindy Team+を活用して、PCT社の頑張りやパフォーマンス状態を可視化することで、信頼関係を構築しようと考えたのです。
──「Findy Team+」の導入について、チームの理解をどのように得ていきましたか?
志田:計測を実施する上で、メンバーには「Findy Team+」による開発生産性の計測は、チームの健康状態を把握するためであり、決して監視を目的としていないこと、そして悪くなったからといって評価を下げる等、結果だけで良し悪しを判断することは一切ないことを説明しました。 開発生産性の可視化に対して懸念されることもあるかと思いますが、PCT社では導入後そのような懸念を表明する声は特にありませんでした。
実際、PCT社独自の振り返り手法を採用しているため、パーソルキャリアからの監視といった印象を持たれていることはありません。むしろ、新しい可視化ツールが導入されたことで、新鮮かつモダンな感覚を持つ人も多いです。 また、これまでExcelでデータ入力やAPIを叩いてデータを取得していた方々にとっては、これが大きな進歩となっています。全体的に、非常にポジティブな変化になったと思いますね。
──現在、目標指標として設定されているものはありますか。
志田:当初は、PCT社がパーソルキャリアと同程度、もしくはそれ以上の開発生産性を出せるようにすることを目指していました。
しかし、開発生産性の計測を進める中で、チームごとに体制やアサインタスクの難易度など、単純な生産性比較が難しいと感じ、PCT社のチーム自体が成長しているか、改善に向けて行動できているかを見るために活用するほうが良いのではと思い、目標を変更しました。 具体的には、Four Keys指標を中心とした数値結果に対してチーム内で起きていた事実と過程を結びつけて話せるようになること、開発プロセスごとの課題を自分たちで見つけて改善に向けて話し合えることを目標として追うようにしました。
現在では、徐々にですが、開発プロセスの事実と過程を正確に把握することで、問題解決や意思決定をより迅速に行うことができるようになってきています。その結果、類似チームと比較して差分を見つけ、アクションやナレッジを横展開する動きもできるようになりつつあります。
スクラムイベントの振り返りにもFindy Team+を活用
──そのほかに、定量数値を活用している取り組みはありますか?
志田:スクラムイベントの振り返りに活用しています。従来の振り返りでは、定性的な議論に偏りがちで、具体的な改善策に繋がりにくいという課題がありました。そこで、Findy Team+を使って各スプリントにおけるPR数やリードタイムなどの定量データを収集し、データに基づいた振り返りを行うようにしています。
例えば、リードタイムの変化が大きい箇所について、サイクルタイムで同時期の状況を確認します。 その結果、レビュープロセスに問題があることが判明した場合は、レビュー分析で詳細を分析します。 取り組み当初はレビューから承認までの時間が長いことがわかったので、レビュアーの偏りが起きていないか等、要因を調べるためにチームのコンディションとの相関関係を分析し、改善に向けたアクションを検討していました。
──振り返りのプロセスも工夫されているとのことですが、どのように標準化していますか?
志田:振り返りのチェック項目をドキュメント化し、共通化することで、各チームの振り返りを標準化しました。直近では、私の方からあるチームのリードタイムに関して気になったところがあり、リーダーに質問した際には、過去の振り返りで既にその事象について議論しており、状況と原因が整理された状態で説明を受けられました。各チームが事実と過程をセットで言語化できるようになっていると実感しましたね。
──Findy Team+ を振り返りに活用する点において、難しかったポイントについて教えてください。
志田:海外拠点で活用を進める上で、文化の違いといった点に難しさはなかったのですが、それ以外では二点ほど難しさがありました。 一つは、数値の価値が必ずしも、開発組織の中で高く評価されないケースがあるという点です。チームやプロダクトごとに状況や条件が異なるため、数値が良く見えても「本当に良いのか」という疑問が生じることがありました。そのため、数値の解釈に悩むことが多かったです。
二つ目は、数値の結果ではなく、どう過程・状況の話に目を向けてもらうか、は難しかったです。 例えばメンバーにオフショア開発の経験があると、結果の数値が優先されることが多い傾向にあります。そこから一歩抜け出して、行動と結果の関連性を理解してもらい、開発プロセスの過程・状況を深堀る重要性、マインドセットを持ってもらうのは大変でした。
──その困難をどう乗り越えましたか?
志田:チーム単位での数値を比較することが重要なのではなく、数値から「チームの状況・過程を話せる状態にしておくことが重要であり、改善を見込める健全なチームである」と説明し、意識を統一しました。 とはいえ意識の統一には一定時間がかかるため、現在は各チームに任せていますが、はじめは一緒に振り返りを行い、1on1などで継続的に話し合いました。短期間で出来るようになったチームもありましたが、全体の8割ぐらいが出来るようになるには半年から1年かかりました。 直近の数値が良くても、中長期で見たら継続的な改善傾向ではないこともあります。無理して良い状態を作るのではなく、悪い部分も含めて把握し、次のアクションを話し合える状態が重要だと伝えてきました。
──具体的な成果やベネフィットについて教えてください。
志田:定量数値に基づいた議論により、さらなる具体的な改善策を導き出すことができました。その結果、チーム全体の生産性だけでなく、メンバーのモチベーションも向上しました。 また、定量データの背景を調べ、言語化して説明できるメンバーが増えたことで、改善文化を醸成することが出来ました。これは可視化以上の価値だと思っています。振り返りの中でKPT(Keep, Problem,Try)からネクストアクションを決め、翌スプリントでその成果をまた振り返るサイクルを継続することで、改善に向けて話し合える組織が作れました。 特に、起きて良かったことだけでなく、良くなかったことも含めて話し合うよう促したことにより、全面的な改善が可能になり、チーム全体の健全性を保つことができています。
※リードタイムサマリ(2024年1月~2024年3月)
国内外を含めた組織全体での開発生産性の向上へ
──今後の開発生産性の向上に向けた取り組みについて教えてください。
志田:今の取り組みを継続し、今回醸成した改善文化を今後も継承できるようにしていきたいです。 改善文化の継承には「開発生産性の向上」よりも「チームを良くしていこう」というメッセージングが重要だと考えています。言語の壁や日本のサービスを開発する意味づけなど、課題はまだありますが、Findy Team+を活用し、定量データを基にした議論と改善を続けていくことで、結果的に組織全体で開発生産性・開発者体験が向上するよう、さらに推進していきます!
──それでは最後に、御社の開発組織のアピールポイントや一緒に働きたいエンジニア像について教えてください。
志田:PCT社のベトナム人メンバーが事業の中心に関わっていくには言語や日本のサービスに対する理解など、まだまだ乗り越えなければいけない壁が多いです。アウトソースとして、スコープを分けてタスクを切り出すやり方もありますが、1つずつ課題を解決していけばPCT社がパーソルキャリアの事業に深く関わり価値発揮できる未来を作れると考えています。PCT社のエンジニアには仕様を理解して開発する以外にも求められることは多いです。体制やプロセスに起因する課題の改善だったり多岐に渡り、それらに向き合い、自ら考え、変化を生み出していくことに楽しさを感じられる仲間を増やしていきたいです。
──志田さん、ありがとうございました!
※PERSOL CAREER TECH STUDIO VIETNAM COMPANY ではエンジニアも募集しています。 HP:https://persol-career-techstudio.com.vn
PERSOL CAREER TECH STUDIO VIETNAM COMPANYの様子はパーソルキャリアのテックブログ「techtekt(テックテクト)にも掲載しています。ぜひご覧ください。
https://techtekt.persol-career.co.jp/
※「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。 https://findy-team.io/service_introduction