Findy Team+ Lab

インタビュー

SPACEにより、リードタイムが41.7%短縮。 うるるが実践するSPACEフレームワークとFindy Team+の活用方法とは?

SPACEにより、リードタイムが41.7%短縮。 うるるが実践するSPACEフレームワークとFindy Team+の活用方法とは?

入札情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」など、複数のSaaSを展開する株式会社うるるでは、エンジニア組織における個人の振り返りや組織の課題発見に、エンジニア組織支援クラウド「Findy Team+」を活用いただいています。

今回は、うるるの技術戦略部にてエンジニアとして活動する、古賀さんと筒井さんにインタビュー。開発生産性の計測において、SPACEフレームワークを導入した背景や取り組み内容、そのなかでの「Findy Team+」の活用方法などについて伺いました。

目次

プロダクトごとに合わせた計測を行うため、SPACEを導入

――まず最初に、お二人のこれまでのご経歴や現在の役割について教えてください。

古賀:新卒で小規模なシステム開発会社に入社し、JavaやC#による受託開発や保守運用などを経験しました。2022年4月にうるるへジョインし、技術戦略部として各部署への支援やIT統制、エンジニアの育成や成長施策など、多岐にわたって活動しています。

筒井:新卒1期生としてうるるに入社し、エンジニアとして数年間プロダクト開発に従事しました。その後、技術戦略部に異動し、技術戦略エンジニアとして活動しています。主な業務は、開発に関わる制度や仕組みの構築、新卒および中途エンジニアの研修、開発生産性向上の支援など多岐にわたります。また、その一環として、SPACEフレームワークの導入も推進しています。

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――開発組織の規模や体制についても教えていただけますか?

古賀:業務委託の方も含めると、50名くらいです。体制としては、各プロダクトごとに開発チームがあり、技術戦略部が横串で見る形になっています。

――開発組織では、どのようなミッションを掲げられていますか?

古賀:技術戦略部としてのミッションは、経営戦略に基づいた技術戦略を策定し、エンジニアがプロダクト開発に注力できる環境を整えていくことです。それによって経営方針と開発のギャップを埋め、エンジニアが共通の目標を持って進めやすくします。

具体的な内容としては、技術支援や技術的な成長方針の設定、セキュリティの担保、開発チームのマネジメント支援、全社的な施策の取りまとめなどですね。現在、開発組織全体としてのミッションはなく、これから打ち出そうとしているのですが、そういったところを考えるのも技術戦略部の役割の1つです。

――開発生産性の計測について、どのような背景から取り組みを始められましたか?

古賀:弊社では開発生産性に限らず、パフォーマンスの可視化など、データドリブンに注力して取り組んできた背景があります。そうしたなか、自社の開発生産性が高いのか低いのかといった話題が、経営課題として上がりました。

その後、技術戦略部が開発生産性の計測についてオーダーを受け、まず取り組んだのがFour Keysの計測でした。それが2022年ごろのことで、スモールスタートで社内の2つの部署から取り組みをスタートしました。現在はSPACEも導入し、徐々に対象部署を増やしている段階です。

筒井:経営課題に上がる前は、自分たちの開発のスピードもレベル感もまったくわかっていない状態でした。他社と比べての良し悪しもわからず、まずは計測するところから始めたという形ですね。

――SPACEの導入には、どういった経緯があったのでしょうか?

筒井:当初は「Findy Team+」を導入してFour Keysの計測を始め、Eliteを目指していました。ですが、Eliteを目指していくだけでは、本当に開発生産性が上がっているのかわからなかったので、各プロダクトの特性に合った開発生産性を測るために、Four Keysだけでなく、SPACEを取り入れることにしました。

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弊社のようにプロダクトが複数存在している会社では、それぞれのプロダクトごとに開発の特性に違いがあります。つまり、プロダクトごとに開発生産性の基準も異なるはずなので、そうした特性に合った開発生産性の基準を設けて、最適な状態にしていく必要がありました。

――どのような場面で、Four Keysだけでは開発生産性を測るのが難しいと感じましたか?

筒井:指標上ではEliteになっているのに、実際にはプロジェクトが遅延しているなど、本当に開発生産性が高いのかどうか疑問に思うことが起きていました。なので、指標を見ても具体的にどこを改善するべきかわからず、運用改善が思うように進まなかったんですね。

もう1つ、弊社の環境的な要因として、前期まで中期経営計画を目標に掲げていたため、厳しい環境下で開発生産性を求められる状況がありました。それにより、開発メンバーに負荷がかかってしまい、モチベーション低下につながっていたんです。

開発生産性を向上させることと、開発者体験を良くしてモチベーションを上げていくこと、この2つが大事だと感じて、どちらも向上させていくにはSPACEが適しているのではないかと考えました。

Four Keysだけを測っていたときは、数字だけが上がっていて、チームリーダーや現場に今の状況を聞いても「よくわからない」と返ってくることがあったのですが、SPACEの導入によってより見えやすく、会話しやすくなったと思います。

あとは、やはりプロダクトごとに合わせた運用が難しかったですね。当時の僕たちはまだ知識不足だった部分もあって、どう落とし込めばいいかあまりわかっていませんでした。Four Keysだけで上手くいっている企業もあると思うので、弊社には合わない部分があったかもしれません。

古賀:Four Keysは明確に決まっているフレームワークですが、SPACEはある程度、曖昧な部分が残されています。そのため、プロダクトごとに合わせて活用しやすく、フレームワークに縛られすぎることなくトライアンドエラーできたところが良かったと思います。

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SPACEの導入事例が少ないなか、自社での活用に落とし込む

――開発生産性の可視化を進めていくにあたって、現場からのネガティブな反応などはありませんでしたか?

古賀:最初にFour Keysの計測を始めたときには、それで評価が決まってしまうのではないかとか、生産性の低いメンバーが槍玉に上がってしまうのではないかといったことは話題に上がっていました。

そこについては、個人にフォーカスするのではなく、チームにフォーカスしていくことを十分に説明しました。経営層など、非エンジニアの方に共有する際も、どこかのチームや特定のメンバーが悪く映らないようにというのは、かなり気を使っていたポイントです。

筒井:その後のSPACE導入にあたっては、「Findy Team+」を既に導入していたチームでは理解があり、さまざまな指標を測っていくことにも抵抗がありませんでした。ただ、業務委託のメンバーや最近入ったばかりの正社員メンバーには、なぜ計測するのかがまだ十分に伝わっていなかったんですね。

メンバーからは、アウトプット量が可視化されることへの否定的な反応もあり、あくまでチームでのアウトプット量を上げることが目的だと、しっかりと理解してもらう必要がありました。なので、根気よく1on1でミーティングをして、なぜ計測するのかといったことをコミュニケーションしていきました。

――取り組みを始めた当初、ほかにも難しかったことはありましたか?

古賀:SPACEの導入にあたっては、当時は国内の事例はもちろん、海外の事例もまだあまりなく、参考にできるものが非常に少ない状況でした。それこそファインディさんのイベントに出て、SPACEに取り組んでいるという企業の方がいれば、すかさず話を聞きに行っていましたね。

一番参考にしていたのは、SPACEを提唱したNicole Forsgrenさんが書かれた英文記事で、それを技術戦略部のなかで読み合わせしたりもしました。我々が理解していなければ開発メンバーへの落とし込みもできないので、我々のなかで噛み砕いていく地道な作業を行っていました。

筒井:SPACEの学習には、2ヶ月くらいかかりましたね。事業部にプレゼンするために、自分なりにまとめて落とし込んでいく作業が大変でした。

Four KeysにもSPACEにも共通して言えると思うのですが、他社の導入事例を見ても、自分たちのプロダクトになかなか当てはまらないことが多いんですよ。同じ業種だと参考にしやすい傾向にありますが、どう当てはめていくかを考えるところが難しかったです。

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――その後、各チームへのSPACE導入はどのように進めていきましたか?

筒井:事業部のメンバーにSPACEを理解してもらったうえで、メンバーと一緒に各プロダクトにとっての開発生産性とは何かを考え、測定する指標を定めていきました。そして、定めた指標に対して、目標や基準をどこに置くかを決めるというのが、準備として最初にやったことです。

SPACEには5つの指標があり、最低3つを選択することが推奨されています。ただ、これに関して「NJSS」ユーザーチームを例に挙げると、5つの指標すべてを測って始めました。Four Keysと同じく、測っても改善につなげられなければ意味がないので、まずは改善のためにより多様な指標でファクトを集めようと考えたからです。

SPACEの指標は、満足度、パフォーマンス、アクティビティ、コミュニケーション、効率性の5つです。このうち満足度については、「Wevox」というツールを利用して、開発者の満足度をスコアとして計測。パフォーマンスについては、「Pivotal Tracker」で開発工数を管理しているので、そのストーリーポイントを計測しています。

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残りの3つは「Findy Team+」で計測していて、アクティビティはマージ済みPR数、コミュニケーションはオープンからレビューまでの平均時間、効率性はオープンからマージまでの平均時間としています。

コミュニケーションの部分に関しては、しっかりとコミュニケーションができていればいるほど、レビューまでの平均時間が短くなるだろうという仮説を我々は持っているので、そのように設定しています。

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マージ済みPR数は51.9%向上、リードタイムは41.7%短縮へ

――SPACE導入の取り組みを通じて、良かったと感じるポイントについて教えてください。

筒井:良かったポイントはいくつかあります。まず1つ目は、SPACEの導入によって多様な指標が見え、運用改善がしっかりとまわるようになったことですね。これに関して、「NJSS」ユーザーチームが自動レビューの機能を導入した際の例があります。

自動レビューは、PRを上げると自動でAIがレビューしてくれるもので、導入目的は開発生産性を上げるためでした。ところが、SPACEで測っても、開発生産性が全然上がっていなかったんですよ。なぜなら、自動レビューを入れたことで、AIが1回目のレビューをした後、2回目のレビューで誰も気づかない状態になっていて、むしろ遅くなってしまっていたんです。

そういった問題点を、多様な指標で見るようになったことで問題のボトルネックを特定し、対応に繋げられるようになりました。何が問題になっているのかについて、ファクトをもとに会話できるようになったことは良かったと感じています。

2つ目は、チームメンバー全員が開発生産性を意識するようになったことです。今までは、チームリーダーやマネージャー陣しか、あまり開発生産性を意識していませんでした。ですが、SPACEを導入して、スクラムイベントに運用改善を入れるようになったことで、チームメンバーの会話の量や主体的な行動が増えました。

そして3つ目は、経営陣や部長陣など、非エンジニアの方々ともコミュニケーションしやすくなったことですね。開発チームが今どういう状態なのかについて、より伝えやすくなりました。

古賀:加えて、横串組織である技術戦略部の目線としては、以前よりも各チームの状態の透明化につながっていると感じます。各チームの開発生産性やエンゲージメントの推移がわかるようになり、そこから支援をするかどうかのジャッジがしやすくなりました。

以前は、マネジメント支援を行う際にも、例えば事業部定例に参加して様子を見たり、事業部長から直接聞いたりしていました。今はそれだけでなく、数値で総括して見れるようになったので、それも良かったことの1つだと思っています。

――取り組みを進めるなかで、「Findy Team+」における数値の変化はいかがでしたか?

筒井:SPACEを本格的に事業部に導入し始めたのが、昨年の11~12月からでした。「NJSS」ユーザーチームは、低迷していた時期があったんです。それは1つのプロジェクトが終わったタイミングで、開発生産性を上げられなかった背景もあるのですが、スコアが安定していませんでした。

取り組みを進めた12月から2月の数値の変化を見ると、マージ済みPR数は51.9%向上、リードタイムは41.7%短縮しています。「NJSS」ユーザーチームでは、安定的な開発を目指していたので、数値が改善したこともそうですが、スコアが安定してきたことが成果として大きいと思います。

uluru_07 リードタイムサマリ(2023年10月~2024年3月)

uluru_08 アクティビティサマリ(2023年10月~2024年3月)

チームだけでなく、個人やシステム面の開発生産性向上も

――開発生産性の取り組みに関して、今後のトライとして考えられていることはありますか?

筒井:今はまだSPACEを30%くらいしか活用できていないと感じていて、道半ばな状態です。前期は導入期間でしたが、今期からは本格的な運用に入っている背景もあり、成果をしっかりと出していくことを目指しています。

成果と言っても、ただ数値が良くなればいいというわけではありません。各プロジェクトの事業部長から、目指したい開発生産性に関する情報をキャッチして、それに近づけるように組織の構築を手助けしていく。そういったところで成果を出すことが、まずは一番です。

また、SPACEを導入してから、チームの開発生産性は測れるようになりましたが、まだ個人の開発生産性を使ったチームメンバーへのケアや、システム面での開発生産性の定義などはできていません。なので、今後さらなるSPACEの活用として、個人やシステム面の開発生産性向上にも取り組んでいきたいと考えています。

それから、SPACEでは定量と定性、両方の指標を使って開発生産性を測れるところがメリットですが、まだあまり定性的なデータを活用できていません。そういったところもしっかりと活かして、もっと1on1の材料などにも上手く活用していきたいです。SPACEを導入している企業の方々にも、いろいろお話を聞いてみたいですね。

――それでは最後に、御社の開発組織のアピールポイントや一緒に働きたいエンジニア像について教えてください。

古賀:弊社は、とても風通しが良い会社です。事業部を管掌している役員との距離が近く、直接意見を伝えることもできますし、やりたいことに関しても寛容です。働き方についても、リモートワークを中心に柔軟に選択でき、ライフステージの変化に対応しやすい環境があります。入社した方々から「良い人が多い」と言ってもらえているところも、特徴の1つですね。

開発組織としては、さまざまなSaaSやクラウドソーシングのプロダクトを手がけており、それぞれのプロダクトに最適化された技術スタックを利用しています。多様な技術をキャッチアップできる環境やチャレンジできる場が豊富にありますので、技術力をさらに向上させたい方や、新しいプロジェクトの立ち上げを経験したい方にとって、非常に魅力的な環境だと思います。カジュアル面談も行っていますので、興味を持たれた方はぜひご連絡ください。

――古賀さん、筒井さん、ありがとうございました! uluru_09

※現在うるるでは、エンジニアを募集しています。

https://findy-code.io/companies/1077

※「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。

https://findy-team.io/

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