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イベントレポート

エンジニア全員の話を聞くところから始まるVPoEの仕事。求められる「課題発見力」や「オンボーディングの仕組みづくり」

エンジニア全員の話を聞くところから始まるVPoEの仕事。求められる「課題発見力」や「オンボーディングの仕組みづくり」

近年、スタートアップの大規模調達や企業のDX投資増加によって、エンジニア組織は拡大、開発のプロセス自体も複雑化するなど、組織づくりを担うVPoEの重要性が高まっています。

2021年9月30日に開催したオンラインイベント『VPoEが語るエンジニア組織づくり最前線』では、急拡大するスタートアップでVPoEとして活躍する、株式会社アンドパッドの下司 宜治さん、株式会社スタディストの北野 勝久さんが登壇。組織づくりの課題や取り組み、採用・オンボーディング、VPoEとしての動き方などについて語り合いました。

目次

登壇者プロフィール

下司 宜治さん/(株式会社アンドパッド)[@gessy0129]

新卒でヤフーに入社。2、3度の転職を経た後、VOYAGE GROUPやサイバーエージェントにも所属。エンジニアとしての方向性をB向け領域に定める。曽祖父や姉、義理の兄が建築関係の職に就いていたこともあり、アンドパッドにジョイン。VPoEに就任し、現在に至る。

北野 勝久さん/(株式会社スタディスト)[@katsuhisa__]

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社にて、ERPシステムの開発・導入等のプロジェクトに携わった後、2016年8月に株式会社スタディストに入社。Teachme Bizの新規機能開発等を担当した後、2018年9月よりSREグループマネージャーとしてプロダクトの信頼性に関わる業務を担当。開発部副部長として開発組織の採用や組織づくりに携わり、2021年3月に執行役員VPoEに就任。

エンジニア組織づくりにおける「埋もれた課題発見力」の重要性

イベント前半では、二人が日々向き合っている組織づくりの課題や取り組みについて語られました。 アンドパッドの下司さんが挙げたのは「統制整備と品質の向上」です。

下司さん:「『ANDPAD』は建築業界のバーティカルSaaSであり、顧客の企業活動と密接に紐づくため、より厳密なセキュリティやリリースマネジメントが問われます。一方で、ベンチャー企業としてスピード感をもってリリースをしたい気持ちもある。統制とスピード感の間で良い落としどころをどう見つけるかは模索し続けています。

統制の整備に関連してで言うと、CircleCIやAutifyなどを活用して、一部のテストを自動化しつつ、いかに品質を高めていくかも大きな課題ですね」 vpoe1

スタディストの北野さんは一番の課題として「マネジメント体制をどのようにスケールさせていくか」に言及します。

北野さん:「どのようにマネジメントを人に任せていくか、任せられる人をいかに採用・育成していくかは常に考えています。今までは任せてみて邪魔をしない、必要な支援を必要なときだけするスタイルを採ってきましたが、もう少し選択肢の幅を広げていけるのかなと思っています。

具体的に今取り組んでいるのは、自分が注力してきた仕事や領域の言語化です。マネージャーの業務をバックログで管理し、マネジメント領域の仕事にチーム全体で向き合えるような体制への移行を進めています」

チームでマネジメント業務と向き合うという点に関連して、北野さんは「課題発見の難しさ」に触れました。「遂行する段階まで進めば、一緒に取り組める人は多い気がするのですが『これが問題だ』と認識するフェーズが難しいように感じている」と課題を共有します。

下司さんも「社内で埋もれている課題をどう発見するか、発見力を磨こうと話している」そうです。

下司さん:「どう課題を見つけるのか、見つけるために何をする必要があるのか、議論を重ねています。また『今誰がどのような課題を持っているのか』を日々蓄積し、アプローチ方法や関連してどのような負債があるかなどは話し合うようにしています。

北野さんと同じく、言語化して残すというのも意識してきました。Design Docにまとめたり、『プレモータム』という形で、起きてほしくない最悪のケースをまとめ、チームの意識を高めるなど行っています。」

情報をオープンに共有し、期間を区切り、メンバーで課題に取り組む

課題発見力に続いて話題にのぼったのは「車輪の再発明」を防ぐ方法について。二人とも積極的に情報を共有しているようでした。

下司さん:「もちろん内容によってオープンに残せるもの、残せないものはありますが、なるべくマネジメントや組織づくりにまつわる思考や業務は、抽象化し、残すようにしています。基本的に自分が業務で考えたこと、やろうとしていることはDesign Docに載っている状態です」

北野さん:「同じく残せる範囲で残すのを意識しています。あと具体の課題解決については、Slackで一時的なチャンネルを設けて話題を集約させ、ログを追いやすくすることもありますね」

こうした情報共有によって組織の課題解決にチームで取り組みやすくなるのではと北野さん。

「なるべくオープンなチャンネルに情報集約し、色んな人を巻き込むよう心掛けている」とのこと。下司さんも「興味がある人がいたら参加していいよ」というスタンスだと話します。 と同時に「メンバーが集まりすぎて、議論がダラダラと続く状態に陥るのを防ぐ」ために、区切りをつけることも決まりにしているそうです

下司さん:「なるべく1つの課題に対して数ヶ月単位で解決しよう、目処をつけましょうと話しています。それでも解決できなければ違うメンバーがやってみる、やり方を変えるなどアクションをしよう、と定期的な見直しも行っています。 エンジニアは発散が得意なので、一つ何かが気になると、あれもこれもやりたくなると思っていて。もちろんゴールをガチガチに固めるわけではないのですが、目安を決めてやっていこうと呼びかけています。」

プロダクト理解や横のつながりを深めるためのオンボーディング

イベントの後半では、採用や育成、オンボーディングなどの取り組みのなかで、特に力を入れている領域について語り合いました。

二人とも「全部」と即答しつつも、最も優先しているのは採用であると話します。北野さんは元Googleの人事責任者の著書『ワーク・ルールズ! ―君の生き方とリーダーシップを変える』から、最高の人材を雇う「ニューヨーク・ヤンキース」戦略と平均的な人材を育て上げる「がんばれ!ベアーズ」戦略を引用し、「スタディストでは前者に取り組んでいる」と語りました。

オンボーディングについては両者の特色が見られました。ANDPADでは5日にわたり建設/建築業界やプロダクト理解を深める研修を実施すると下司さんが紹介します。

下司さん:「エンジニアが入社しても最初の5日間はほとんどコードを書きません。建設/建築業界のペインや検討されている解決策などを、部門長や代表、CFOなどに、熱く語ってもらうことで業界・プロダクト理解を深めています。

その後、各プロダクトチームにアサインする中で、より深堀ったプロダクト研修をどうしていくかを今考えているところですね。プロダクト理解をいかにするか?にかなり注力しているところはアンドパッドの特色かなと思います」

スタディストでは「全社と個別チームの二階層」でオンボーディングを捉え、取り組んでいました。

北野さん:「全社のオンボーディングでは、各部門の責任者が自らのチームについて話します。 『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』で紹介されている『新入社員大学』を参考にしています。個別のチームに入ってからは、1on1に加え、他チームのリーダーやメンバーと話す機会を設けています。

また、入社後すぐに自身の経歴をチームに共有し、一緒に今後スタディストで何をやっていきたいかを発散的に話す機会もあります。その人の活躍をみんなで応援できるのに加え、入社理由を知ることで採用のアピールポイントへの理解も深められます」

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VPoEとEMの視野の違い、VPoEの動き出しはどこから?

イベント後の質疑応答では、VPoEとして働いている、あるいは働くことに関心のある参加者から質問が沢山集まりました。

まずは「VPoEとEMの違いをどう捉えているか」について。下司さんは「VPoEとEMでは情報の集まる量が違うため、結果的に視野の違いが生まれるのではないか」と視点を示します。

下司さん:「EMは基本的に担当している組織と隣の組織の情報のみ、執行役員やVPoEはそれに加えて他部署の情報も集まってくる。アンドパッドでは経営会議の情報などは積極的にマネージャーにも共有し、最終的な意思決定はともかく、同じ情報、同じ示唆を得られるような環境を整えています。それが育成につながるのではと思います」

北野さんは下司さんの話に頷きつつ、別の違いを加えました。

北野さん:「VPoEは経営陣から経営リソースを確保する権限と責任を持っているのも違いの一つかもしれません。 あとは『マネージャーのマネージャー』として組織に向き合うことです。例えば、隣接する二つのチームで発言が食い違っているとき。VPoEがバランサーとして動く場面もあるように感じます」

続いて、1週間前にVPoEに就任したという参加者から「最初はどこから手をつけたのか」と質問がありました。

北野さんは、まずは大切にしたいことの言語化や採用にまつわる課題など、基盤の整理を進めていったと共有。下司さんは担当するチーム全員の困りごとや課題をヒアリングしていったと言います。

下司さん:「僕の場合、外部から転職してきたのもあり、まずは全員の話を聞いていったんですよね。そうすると、環境改善や採用など、VPoEという立場の方が解決に動きやすい課題が出てきたので、VPoEになったという順番でした。 なので、少し抽象化していうと、信頼を勝ち得るために、まずはみんなの解決したい課題に取り組んだ感じですね」

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最後にVPoEとして今後どのように動いていきたいかを二人が共有しました。共通するのはあくまで「組織中で最適な動きをした結果、今はVPoEをやっている」という点です。

下司さん:「元々『組織の一番弱そうな部分の仕事をやる』ということをポリシーにしています。前職で技術部門の部門長になったのも、アンドパットでVPoEになったのも、その領域が、もっとも弱い部分だと考えたからでした。組織づくりが落ち着いたら、また別の弱い部分に力を注ぐのだと思います。 なので、今後も技術力も絶えず磨き、常に組織のどこが弱いかを見つけ、強くするために力を注げる状態の自分でいたいですね」

北野さん: 「私も良いチームで良い物作りをすることにずっと向き合いたいと思っています。 最近ではCTOのような役職にいた人がいちエンジニアに戻る例などありますし、私自身も今はVPoEですが、今後変わることは十分あり得ると考えています。これからも良いチームで良い物作りのために最適な場所にいられるようにしたいです」

今後もFindyではエンジニアのキャリアや働き方に関連するイベントを開催予定です。興味のある方はぜひこちらをフォローいただけたら嬉しいです! https://findy.connpass.com/

また、イベント当日に株式会社アンドパッド・下司さんに言及いただいたFindy Teamsの事例記事はこちらになります! 「エンジニア個人の振り返りや組織の課題発見に活用」株式会社アンドパッド様-Findy Teams活用事例インタビュー

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