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イベントレポート

【KINTO×星野リゾート】大手DX企業におけるエンジニア組織の内製化・急拡大への挑戦と苦悩

【KINTO×星野リゾート】大手DX企業におけるエンジニア組織の内製化・急拡大への挑戦と苦悩

2022年12月16日、ファインディ株式会社が主催するイベント「【KINTO×星野リゾート】大手DX企業におけるエンジニア組織の内製化・急拡大への挑戦と苦悩」がオンラインにて開催されました。

近年では、メガベンチャーの増加やスタートアップの大規模調達、大手IT企業の上場などによるエンジニア組織の拡大だけでなく、大手企業においても、DX投資の増加や迅速な顧客価値提供の実現を目指したエンジニア組織の組成などが増加しています。そうした中で、既存の業務オペレーションやシステムを考慮しつつ、どのようにDX化を進めていくか悩まれている企業も多いのではないでしょうか。

そこで、今回のイベントでは、大手企業においてDX化やエンジニア組織づくりを牽引してきた、KINTOテクノロジーズ取締役副社長の景山さんと、星野リゾートCTOの藤井さんをお招きし、現在のエンジニア組織状況やデジタル変革に向けて取り組まれてきたこと、社内エンジニア組織立ち上げにおける苦労などについて、パネルディスカッション形式でお話していただきました。

■登壇者プロフィール

景山 均さん/KINTOテクノロジーズ株式会社 取締役副社長 @hito4_kageyama 楽天にて、楽天グループのデータセンター・ネットワーク・サーバーなどのインフラやIDサービス・スーパーポイントサービス・メールサービス・マーケティングDWH・ネットスーパー・電子マネー・物流システムなどの開発を統括。 その後、ニトリのIT、物流システム領域責任者を経て、2019年6月にトヨタファイナンシャルサービスに入社。デジタルIT部隊の立ち上げをゼロから実施。2021年4月より現職。 KINTOテクノロジーズ株式会社の企業概要はこちら

藤井 崇介さん/株式会社星野リゾート CTO @ZooBonta Webシステム開発関連の開発を10年間経験後、2018年に星野リゾートに入社。 開発体制の内製化を主導し、エンジニア組織の立ち上げを主導。現在はエンジニアとして活躍する傍らで、CTOとして活動中。アジャイル開発に興味があり、IPAのアジャイルWGとしても活動中。 株式会社星野リゾートの企業概要はこちら

■モデレーター 内田博咲也/ファインディ株式会社 新卒でデロイトトーマツコンサルティング合同会社に入社し、全社・事業戦略策定、新規事業の立ち上げ・推進等を経験し、2021年10月よりFindyに参画。Findy Team+事業部にて、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスを担当。

※本イベントのアーカイブ配信(無料)はこちら

目次

登壇者お二方の自己紹介からイベントスタート

――本日はよろしくお願いいたします。まずは、お二方の自己紹介からお願いします。

景山:KINTOテクノロジーズの景山です。2019年6月に親会社のトヨタファイナンシャルサービスに入社して、IT部隊をつくっていました。そして、2021年4月にKINTOテクノロジーズを設立し、トヨタファイナンシャルサービスのIT部隊が全員KINTOテクノロジーズに移ってきたという経緯があります。

私自身は、ずっとECやWebサービスの開発寄りのところを経験してきて、大手ITベンダーや国内の大手・中小・ベンチャー・外資など、様々なバリエーションの会社を経験してきました。トヨタグループでは、「KINTO」関連やそれ以外も含め、Webサービスの領域を主戦場として内製開発でグループに貢献しております。本日はよろしくお願いします。

藤井:星野リゾートの藤井です。私は10年ほど、SIerとして開発をしていました。そんな中、関わりのあった星野リゾートから声をかけてもらい、2018年に入社しました。

入社した当初、星野リゾートにはエンジニアがほぼいなかったのですが、裏側では外注のシステムがたくさん動いていて、まずはそこを立て直そうと動き始めました。最初の1年くらいは私1人だけでしたが、徐々にエンジニアを増やしていき、より上位の立場を任せていただくようになりました。

今はエンジニアとしての仕事もしつつ、CTOや管理職的な役割をしています。加えて、アジャイル開発への興味もあり、IPAのアジャイルワーキンググループで、アジャイルを盛り上げていく活動もしています。本日はよろしくお願いします。

――本日のアジェンダはこちらになります。それでは、さっそくパネルディスカッションに移っていきたいと思います。

パネルディスカッションのアジェンダ

それぞれの会社の背景と現在のエンジニア組織

――まずは1つ目のテーマ、「現在のエンジニア組織はどうなっているか?」について、景山さんからお話いただければと思います。

景山:KINTOテクノロジーズは2021年4月設立で、現在の社員数は約300人です。拠点は、東京に2つと名古屋、大阪にあります。

我々のミッションは、グローバルに展開するトヨタファイナンシャルサービスが推進している、「KINTO」を含むビジネスをテクノロジー面からサポートすること。また、海外49ヶ国にあるトヨタファイナンシャルサービスの子会社へのサポートをしているほか、トヨタグループ関連の仕事も一部行っています。

我々の組織は、とても多様性があるところが特徴です。エンジニアの職種も幅広く、QAも内製なのでQAエンジニアもいますし、データサイエンティストもいます。インフラも自分たちで構築していますし、生産性を高めるために開発環境を整備する部隊もあります。

そして、私を含めて全員が中途採用であることも特徴です。Webサービス企業やSIerの出身者が多いですが、出身企業もバラエティーに富んでいて、ソフトハウスから来ている人もいますし、Webサービス企業ではないエンドユーザーの企業から来ている人もいます。

社員の外国籍比率も高めで、25%程度です。社内公用語は日本語ですが、社内では英語や中国語など様々な言語が使われています。

KINTO様 組織概要

――続いて、藤井さんからも現在のエンジニア組織について教えてください。

藤井:まず、星野リゾートについてご紹介すると、全国約60施設のリゾートや旅館、ホテルのオペレーションを担っている総合リゾート運営会社です。私たちは、多様な旅のニーズの創造を通して、世界に通用する運営会社になることを目指しています。

1914年創業で、今年で108年になる会社ですが、今もどんどん変わり続けているところが魅力の1つです。旅行産業は、世界で最も大切な平和維持産業だという視点を持ち、「旅は魔法」をミッションとして、夢は大きく運営は地道に、をモットーにやっております。

私たちの組織が拡大したのは、本当にここ数年の話です。2000年前半は私たちの運営する旅館の数がそれほど多くなく、ひとり情シスでなんとかまわっていました。しかし、2010年ごろになると、会社の拡大やテクノロジーの進化から課題を感じるようになり、様々な取り組みが始まりました。

オフショアに挑戦してみたり、国内のパートナーと組んでみたり。自分たちが直接エンジニアに発注するようなこともしていたのですが、なかなかうまくいかず、内製化を真剣に見直そうというタイミングで私が入社しました。そこから急拡大し、今では70人を超える組織になっています。

星野リゾート様 組織規模

藤井:現在は、クロスファンクショナルで機能的に変化する組織をつくっています。情報システムグループは約70人ですが、そのうちエンジニアは20人ほど。エンジニア以外は、ほとんどが新卒入社で、実際に接客していたり、予約の問い合わせ業務をしていたりするスタッフです。彼らはお客様や現場の要望にくわしいので、そのノウハウを生かすようにしています。

組織が大きくなってきたので、今は開発寄りのテクノロジー研究開発ユニットと、実際にシステムの運用や導入を行う、ITサービスマネジメントユニットに分かれて活動しています。

星野リゾート様 組織構成

“最初の1人”として、どのように内製組織をつくってきたか

――続いてのテーマは、「これまで注力して取り組んできたことは?」です。社内エンジニア組織を立ち上げる際に、苦労したポイントなどもあれば教えてください。

藤井:私たち星野リゾートの大きなテーマは、内製化の促進でした。もともとは、アイデアの実現・実装方法は発注先に決めてもらっていました。

ただ、当時は外部に依存していた分、実現までのスピードに課題があり、ビジネスの進化にシステムが追従できないという問題がありました。そのため、当時は経営陣からシステム開発への信頼が少なく、なんとか内製化して信頼を取り戻そうというのが最初の取り組みです。

私が入社したとき、チームを組んで開発できるエンジニアは私1人だったので、外部のパートナー10人くらいと一緒にスタートしました。社内に1人いるだけでも大きく変わり、現場から上がってくる情報をもとに、どの順番で何をつくっていくか、という意思決定が上手くまわり始めました。さらに、システムの中身から開発に必要な期間などがすぐにわかるようになり、経営判断も早くなったんです。

当時は、デプロイが2~3ヶ月に1回とか、早くても1ヶ月に1回くらいしかできていなかったのですが、それが1週間に1回は当たり前になり、1週間に3回くらいデプロイできるようになりました。すると今度は、システムに対する期待がすごく膨らんでくるんですね。とはいえ、人がいない状況だったので、内製化を拡大するためにエンジニアの募集を始めました。

でも、単にエンジニアを集めればいいかというと、そうではないと思っていたんです。というのも、会社全体の社員数は当時で2000人ほど、今では4000人を超えています。そこに対して、エンジニアが数名という状況なんですね。

エンジニアを集めて好き勝手に組織文化をつくってしまうと、今まで大事にしていた現場のカルチャーと、ギャップが生まれてしまう可能性があります。なので、エンジニアを集めるだけでなく、現場出身のスタッフと一緒のチームにすることで、お互いにいろんな情報を取り入れながら、組織をつくっていくことに取り組んできました。

――続いて景山さんからも、これまで注力して取り組んできたことについてお願いします。

景山:トヨタグループは2018年に、メーカーからモビリティカンパニーへ移行することを宣言しています。以前まで、トヨタは車をつくって販売店さんに卸すのが仕事で、直接お客様に車を売っていませんでした。ですが、2019年3月に「KINTO」が始まり、これがトヨタとして初めてお客様に直接車を売るビジネスで、サービス化の第1号でした。

これにより、トヨタはWebサービスでお客様とダイレクトに繋がるようになりました。トヨタでは、今までこうしたサービスをあまりやってきておらず、“出すまでが勝負”の文化だったんです。しかし、我々がやっている領域は、“出してからが勝負”。出した後に、継続的に改善をしていかなければ、お客様に満足いただけるサービスにはなりません。

そういったサービスを開発するには、やはりベンダーさんにお願いするのではなく、内製開発部隊を持つ必要があります。ということで、「KINTO」を立ち上げるときに、まず内製開発部隊をつくるというジャッジをしました。

内製で開発するメリットは、ビジネスに責任を持てることですよね。我々のミッションは、つくったプロダクトやサービスを通じて会社が利益を上げたり成長したりすること、お客様に満足していただくことにあって、単にシステムを開発すればいいというわけではありません。こうしたところが内製開発組織の特徴であり、必要なマインドだろうと思っています。

私が最初の1人として、内製開発組織をつくり始めて3年ほど経ちますが、毎年100人くらいずつ増え、今では300人くらいになりました。それでもまだ全然足りないので、パートナーのエンジニアさんに250人ほど参画いただき、全体で550人くらいの体制になっています。

メーカーでは、サービス化したいものが非常にたくさんあり、次から次へとサービスのアイディアが出てきます。今は、それをこなしていくのに精いっぱいな状況ですね。

KINTO様 組織規模

景山:また、我々はレガシーがないので、スタートアップの開発チームで使われているようなツールを最初から使っています。トヨタのネットワークとは分離した、まったく異なるインフラ環境を用意して、開発環境をつくるということにも取り組んできました。

KINTO様 開発ツール

組織が急拡大する中で、注力している課題と取り組み

――組織規模が拡大する中で、それに伴う課題も出てくるかと思います。次のテーマ、「現在注力している課題や取り組みは?」について、景山さんからお願いします。

景山:先ほどお話ししたように、急激に社員が増えてきています。最初はとてもフラットな組織で、隅々まで目が届いていて、意思決定も迅速でした。しかし、さすがにこの規模まで組織が大きくなると、私1人では見切れなくなり、いろいろとほころびが出始めます。

そもそも全員が中途採用なので、星野リゾートさんのようにカルチャーがあるわけではなく、優秀なメンバーが集まっているものの、それぞれに今までのやり方でやっている部分が多くあったんです。人事制度や評価制度は、分社化したときに新しくつくりましたが、「KINTOテクノロジーズは、こういうカルチャーです」というものがありませんでした。

なので、今はカルチャーを言語化するプロジェクトを始めています。それから、前職で学んできた言語や技術もさまざまなので、勉強会や技術コミュニティへの参加、外部研修、書籍購入などに関して、会社として最大限潤沢に資金を投入しています。例えば、1人20万円くらいする外部研修にチーム6人全員で参加したりなどですね。

そういったことが活発に行われていますので、少し前にエンジニアリング教育研修プロジェクトというものを立ち上げて、そこで会社としての生産性を高めるためのプロセス定義を行っています。

加えて、事業サイドへのバックアップですね。事業サイドが上手く要件定義をしてくれないと、なかなか要件が決まらず、プロジェクト全体の遅れに繋がってしまうので、事業サイドの要件定義力を高めるための取り組みも行っています。

KINTO様 注力取り組み

――勉強会や研修などへの潤沢なサポートを行うには、会社の理解を得る必要があるかと思います。そのあたりはどのようにコミュニケーションされたのでしょうか?

景山:私が入社したときに、親会社の社長や当社の社長に対して、我々がやろうとしていることや内製開発組織について、勝手に勉強会をしていました。毎週1~2時間くらいの勉強会を、3~4ヶ月やっていたんです。よく付き合ってくれたなと思いますね。その結果、我々のことを理解してくれていて、今こういうやり方ができているという背景があります。

――続いて藤井さんからも、現在注力している課題や取り組みについてお話しいただければと思います。

藤井:私たちも組織が拡大したことによる課題があり、今それに取り組んでいるところです。以前は、10人くらいであれば、みんなで情報やノウハウが十分に共有できていたのですが、エンジニアが20人になっただけでも、かなり見えにくくなってきています。

そのため、ベロシティを測って生産性を可視化したりしていたんですが、指標としては全然足りなくて。開発の生産性って何だろうとか、どういう人たちが効率的に働いているんだろうとか、そういったことをもっと可視化するための取り組みを始めています。そうした経緯から、「Findy Team+」も導入させていただきました。

数字って結構、嘘がつけてしまうんですよね。それこそベロシティだと、ポイントを多く見積もればよかったりするので。なので、そうではない指標も必要だと考えて、コードを可視化したりしています。

あとは、クロスファンクションのチームになったのがここ最近の話なので、組織のあり方を変えていくところは今、苦労しているポイントの1つですね。

「Findy Team+」を活用し、負荷や生産性を可視化

――それでは、最後のテーマ「今後注力して取り組んでいきたいことは?」について、お伺いしたいと思います

景山:まさに「Findy Team+」を活用させていただいてるところですが、さまざまな職種のメンバーがいるため、難しかったのが負荷の可視化です。組織をマネジメントするためには、そこをしっかり客観的に見ていきたいのですが、個別に見ようとすると、今度はマネージャーの負担が高くなりすぎてしまいます。

KINTO様 組織課題

景山:「Findy Team+」はGitHubと連携できるところがすごく良くて、コード量がよくわかるんですね。それを見ると、「この人こんなに頑張っていたんだ」という発見もあり、見えないところで頑張っていた人が、これまで見逃されてきたかもしれないなと。そういった部分の把握に役立っています。

最初は、個人の負荷を把握するために導入したので、個人のデータばかり見ていたのですが、最近はチーム全体のパフォーマンスも見るようになりました。これらの数字を、マネージャーだけでなくメンバーとも一緒に見ていると、メンバー自身がいろいろと考えてくれて、例えば「サイクル分析を活用して、開発サイクルの効率化を図りたい」といった意見が、積極的に出るようになったんです。

そうした意見が出ることは当初まったく想定していなかったので、数字の見える化というのはコミュニケーションの種になるんだなと感じました。ここは一番、入れてよかったと思うところですね。

今どんどんプロジェクトが増えているので、こういったツールで負荷を見える化することで、私のような立場では、新しいプロジェクトにどのプロジェクトから人を移すかということも、考えやすくなります。

生産性向上の取り組みにおいても、定量的なデータを基に議論できるのがいいですね。データがないと、議論が発散するばかりでなかなか収束せず、空中戦になってしまうことがありますが、数字を見れば一目瞭然です。会社全体で、どういった生産効率の指標を追いかけていくべきか、まさにこれから議論していきたいと思っています。

今は組織の拡大に目が向きがちですが、これだけ大きくなると、効率的な組織かどうかを事業サイドのマネジメントから問われるようになってきます。ですので、数値化したものを事業サイドのマネジメントにもしっかりフィードバックして、日々生産性を高めているんだということを見せていきたいと考えています。

KINTO様 今後の取組

――続いて藤井さんからも、今後注力して取り組んでいきたいことについてお願いします。

藤井:まず1つは、最初の方で触れたように、組織の構成を大きく変えています。これは、会社の事業が拡大するほど、今は必ずシステムが関わってくるので、それに応じて組織を拡大していくためです。

そして、組織が拡大するほど、今までのやり方では上手くいかない部分が出てきます。一人ひとりが自律的に働くことを重視して、5人くらいのチームがそれぞれ自律的に動ける形を目指していますが、外から見えないとチーム間を上手く繋げず、非効率になってしまいます。なので、今つくっているのが、横断的支援チームです。

横断的支援チームでは、システム開発の共通部分やスキルなど、いくつかのテーマでチームを設けて、それぞれのチームに融合させていくことに取り組んでいます。

もう1つの取り組みが、生産性の可視化です。組織が拡大して見る範囲が広くなると、取捨選択が必要になりますが、みんなからの報告をもとにしていると、個人の主観が入ってしまって平等に評価できません。そのため、チームの生産性や幸せの度合いなど、あらゆるものの可視化に今取り組んでいます。

実際に、新チーム発足時に「Findy Team+」を導入したのですが、最初はプルリクが少なかったり、レビューのクローズが遅かったりと、あまり生産性がよくありませんでした。それで、データを見ながら課題を話し合っていったんですね。

例えば、「なぜレビューがクローズされないんだろう?」といったことに対して、レビューを上げてもリマインドを投げていないから、リマインドを自動化しようとか。どうしたらクローズになるのか、ルールがちゃんと決まっていないから決めようとか。そういった改善から、数字がどんどん良くなっていきました。

こうしたことを重ねていくと、自然と作業が生産的になるし、生産的になるとビジネスに良い影響を与えるし、その結果として関わっている人が幸せになります。なので、今後もこういった可視化に取り組んでいこうとしています。

星野リゾート様 FT導入効果

藤井:そして、システムに関する取り組みとしては、あくまで宿泊業という本筋から外れることなく、新しい旅の実現を支えるシステムを構築することをテーマとしています。

宿泊業界はすごくレガシーで、現場では20年前につくられたシステムが動いているのが当たり前なんですね。しかも、それを置き換えることができないという、DXの壁が業界全体にあります。私たちは2年くらい前から、それを根本的につくり変えるシステムの開発に取り組んでいて、その実現に向けて今大きく動いています。

イベント参加者からの質問に答えるQ&Aへ

――イベント参加者の方からいただいた質問にも、お答えいただければと思います。まずは藤井さんへの「現在、外部委託の方の規模はどれくらいですか?」という質問です。

藤井:内部のエンジニア20人に対して、外部委託は15人くらいですね。最初の方でお話ししていた組織の人数には、外部委託の方の人数は含まれていません。

経営陣からは、全員を内部エンジニアにした方がいいのではないかと言われるのですが、そうすると管理コストの問題も出てきますし、先ほどお話しした組織文化をどう伝えるかという面もあるので、そこは慎重に進めています。

――続いて、「開発したものが事業のアウトカムに繋がっているかどうか、どのように評価されていますか?」という質問です。景山さんいかがでしょうか。

景山:まず我々が開発するものは、すべて社長と話をしていて、経営として今必要なものだけをつくっています。大量のリクエストがある中で、新規サービスを何本も立ち上げているので、社長や事業の責任者たちと話をしながら、優先順位をつけています。

それから、事業サイドの人が言うものを100%つくると、どうしても重くなったり不要なものが出てきたりするので、要件を絞っています。社長からはよく「無駄なものをつくらないでくれ」と言われますね。「事業サイドは、なんでもかんでもつくれと言うけど、ちゃんと断ってよ」と(笑)。

そういう意味で、我々が無駄なことをやっている感覚はありません。リリース後には、事業サイドと一緒に、例えば当初期待していた申し込み台数が来ているかとか、来ていないならどうするか、といったことを常に話し合うサイクルができています。

――こちらも景山さんへの質問で、「内製組織をつくる上で重要になる人事制度について、どのように整えられていますか?」とのことですが、いかがでしょうか。

景山:人事制度は、やはりトヨタグループなので、完全にIT企業とはいかない部分もあります。しかし、そうした中でも、マネージャーにならないと給料が上がらないような人事制度ではなく、マネージャーより給料の高いエンジニアが普通にいる人事制度が実現しています。まだつくったばかりで試運転中ですから、定期的に改善もしていきたいと思っています。

――それでは最後に、採用情報のご案内があればお願いします。

藤井:星野リゾートでは、引き続きエンジニアを採用しています。私たちの強みは、ビジネスサイドとの距離の近さです。少なくとも月に1回は経営陣と、今のシステムの状況や何が重要かということを話し合いながら進めています。

そして、現場があってこその事業です。現場の方々と一緒に協力しながら、お客様や現場の人たちが使って喜ぶものづくりがしたい方に、ぜひ来ていただきたいです。

景山:我々は幅広い職種を募集しています。最近はDXディレクターという、個々の販売店さんに入り込んで業務プロセスの改革などを行う職種もあり、リアルな手触り感があることが特徴の開発組織です。

トヨタグループとして、メーカーからサービス化していく過程で、我々が担当している領域が非常に重要で、今後もさまざまなプロジェクトが立ち上がる予定です。世の中を変えるようなプロジェクトに携われることに興味があれば、ぜひお声掛けください。

――藤井さん、景山さん、本日はありがとうございました!

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